第125話

家族愛
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2021/08/02 10:47
あなたside
半年?……半年?

今から半年なんて、1月までしか生きられないってこと?
先生
最高で半年だからわからないよ。
あなた
…半年、
私は、来年の春は決してみんなといられないということ。

来年の桜は決して見れないということ。

…私に、26歳は来ないということ。

それしかわからないということ。
先生
少しでも症状が重くなったら直ぐに入院してもらうことになるよ。
あなた
…うん、
先生
…お兄さん呼んだから、今日は実家に帰った方がいいんじゃないかな?
あなた
お兄ちゃん呼んだの?
先生
急いできてくれたみたいだよ。
あなた
きっと今、お兄ちゃんに会ったら泣いてしまう。

それでも、壱馬のいる、待ってる家に帰れる自信がなかった。

先生もそれをわかってての配慮だったんだろう。
海翔(かいと)
あなた、
診察室から出ると、お兄ちゃんが辛そうで悲しそうな笑顔で迎えてくれた。

予想通り、お兄ちゃんを見た瞬間、私は涙が止まらなかった。

この後、ママとパパになんて言えばいい、

楓雅になんて話せばいい。

…メンバーに、壱馬になんて話せばいい。

そんなことが脳内を駆け巡った。
海翔(かいと)
今日母さんが俺らの好物めっちゃ作ってくれてるってよ。
あなた
…そうなんだ、
海翔(かいと)
楓雅も俺もあなたも帰ってくるのなんて珍しいもんな。
母さん大喜びだよって笑ってるお兄ちゃんはきっと私を励ましてる。

…というより、笑顔にさせようとしてくれてるんだ。

それでも、笑える余裕がないのは確か。
あなた
お兄ちゃん。
海翔(かいと)
ん?
あなた
…ママとパパに、なんて言ったらいいかな。
そう口にした時、さっき枯れるほど泣いたはずの涙がまた溢れてきた。

車を停めたお兄ちゃんは、少し考えるようにして、私を抱きしめた。

小さい頃、抱きしめてくれたみたいに。
海翔(かいと)
一緒に言おう。大丈夫、兄ちゃんがついてるから。
あなた
っ…うっ…
お兄ちゃんはそう言って、車を出発させた。

家までの車内と飛行機の中は、ママが何を作ってくれてるかを2人でただ予想してた。

家に着けば丁度楓雅も到着したとこだったらしく。
ママ
ほらほら、3人が好きなご飯用意しといたから!
楓雅(ふうが)
別に頼んでない…
海翔(かいと)
まあまあ、ありがとう母さん。
家に入っていくお兄ちゃんと楓雅を見ながら1人で玄関に立ち尽くしてた。

さっきお兄ちゃんは一緒に言ってくれるって言ってくれたけど、それでも怖い。

これまで、散々迷惑かけて心配かけてきた親にさらに心配させるなんて、
パパ
あなた、入らないのか?
あなた
…え、あ、入るよ。
パパ
ママもパパも何をするために3人が帰ってきたのか気づいてないわけじゃない。
あなた
え?
パパ
あなたのタイミングでゆっくり話せばいい。
そう言ったパパは、早くご飯食べないとママが悲しむぞと言ってリビングに消えていってしまった。

…私のタイミングでゆっくり話せばいい。

ママとパパは気づいてるんだ。

もう、話すしかない。

話さなきゃならないことなんだから。
あなた
ママパパ、あのね、
ママ
どうしたの?
笑顔で私の言葉に返事をしたママの顔を見るとまた泣きそうになった。

それでもお兄ちゃんが傍で大丈夫と言ってくれたから、安心できた。
あなた
私、再発したみたい。
ママ
再発って…病気のことであってる?
あなた
うん。
ママ
なんで急にまた…再発って…
あなた
わからない。
最近調子が悪くて先生に相談したらそう言われた。

そういえば、そう、と納得した。

この先の言葉、少し言いづらいし、これはお兄ちゃんと知らないからみんなをびっくりさせるかもしれないけど、言わなくちゃならない。
あなた
あとね、私の命はもって半年だって。
ママ
………え?
パパ
今なんて言った。
海翔(かいと)
もって半年って半年も持たないかもしれないってことじゃ、
楓雅(ふうが)
は…?
予想通り、家族全員が固まった。

いずれ知ることになるからいいよね。

俯いたまま、4人の反応を待った。

涙をすする音がして、ああ、ママ泣いてるんだなって感じた。

その音が近くなってきたと思えば、
ママ
辛かったわね…
そう言って私をただ抱きしめた。

1人で聞かせるんじゃなかったって言うママはただごめんねって言うだけで。

ママのせいじゃないのに、誰のせいでもないのに。
パパ
これからどうするんだ?
あなた
まだ決めてない。ただ、症状が重くなったら直ぐに入院するってことくらいしか。
パパ
そうか…
後日、HIROさんとメンバーにも伝えることになるんだろう。

その時、どうするか話し合うことになるんだろうな。
楓雅(ふうが)
…しばらくこっちにいんの?
あなた
マネージャーさんが3日間だけ休暇とってくれた。
楓雅(ふうが)
そうなんだ、
そう言った楓雅は携帯を持って廊下に消えていった。

お兄ちゃんも携帯を持って家を出た。
ママ
じゃあ、3日間はこっちにいなさい。
あなた
うん、そうする。
パパ
ゆっくり休みなさい。
あなた
ありがとう。
リビングに戻ってきた2人は、同時に、

俺もしばらくこっちにいる、そう言った。

2人とも休み取るの難しいだろうに。

私のためにわざわざとってくれたんだなって感じて少し笑った。
あなた
ありがとうね。
楓雅(ふうが)
姉ちゃんが心配なだけ。
あなた
いつからこんなに大人になったんだか。
この先の楓雅を見れないと思ってしまって、悲しくなったのは心の中に閉まっておこう。

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