壱馬side
あなたが病気のことを話してくれてから、みんなは今まで以上に過保護になった。
そりゃそうだ。
余命宣告されるくらい、悪化してしまってるんだから。
みんな、あなたに生きて欲しいという意味も込めてるんだと思うけど。
でも、最近気になることがある。
あなたがよくぼーっとするようになった事だ。
前からぼーっとしてたけど、頻度が多いというか。
心配になるくらいぼーっとするから、目が離せなくて。
あなたは悲しそうに笑って、謝った。
なんで謝る?
ちょっと待って、心臓の病気な上に、アルツハイマー病…?
俺とあなたの会話を聞きつけたメンバーたちが集まってきて。
みんな、俺と同じように思考回路が停止してるようだった。
心臓が弱くて、期限が迫ってきてる中で俺たちのことを忘れるかもしれないってこと?
よく良く考えれば、納得出来た。
最近のあなたは忘れっぽかった。
マネージャーに言われた場所も忘れちゃったり。
そう深々と頭を下げて俺たちに言った。
あなたのダンスやパフォーマンスに対する熱意は昔から感じてた。
ファン思いなとことか、グループ愛が強いとことかも。
だから、あなたのお願いを聞き入れない訳にはいかなくて。
ありがとうと笑うあなたの笑顔を見て、胸がきゅっと締め付けられた。
今は9月の終わり。
もう、10月がやってくる。
あの笑顔を見れるのも、あと3ヶ月。
そう感じながら、あなたがもっと生きれるよう支えていこうときめた瞬間だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!