第129話

瞬間
4,363
2021/08/05 09:43
壱馬side
あなたが病気のことを話してくれてから、みんなは今まで以上に過保護になった。

そりゃそうだ。

余命宣告されるくらい、悪化してしまってるんだから。

みんな、あなたに生きて欲しいという意味も込めてるんだと思うけど。
壱馬
壱馬
あなた、こっち。
あなた
え、あ、ごめん、
でも、最近気になることがある。

あなたがよくぼーっとするようになった事だ。

前からぼーっとしてたけど、頻度が多いというか。

心配になるくらいぼーっとするから、目が離せなくて。
あなた
…ねえ、壱馬、
壱馬
壱馬
ん?
あなた
…アルツハイマー病って知ってる?
壱馬
壱馬
あの記憶とか少しずつなくなるやつだろ?
あなた
そう、
壱馬
壱馬
……もしかして、
あなた
……ごめんね、
壱馬
壱馬
は?なんで謝んの、ちょっと待って…
あなたは悲しそうに笑って、謝った。

なんで謝る?

ちょっと待って、心臓の病気な上に、アルツハイマー病…?

俺とあなたの会話を聞きつけたメンバーたちが集まってきて。
翔吾
翔吾
アルツハイマー病って徐々に記憶がなくなってく病気であってるよね?
あなた
うん。
翔吾
翔吾
そんな…なんで、
あなた
…ごめん、
翔吾
翔吾
あなたが謝ることじゃない、謝ることじゃないよ…
みんな、俺と同じように思考回路が停止してるようだった。

心臓が弱くて、期限が迫ってきてる中で俺たちのことを忘れるかもしれないってこと?

よく良く考えれば、納得出来た。

最近のあなたは忘れっぽかった。

マネージャーに言われた場所も忘れちゃったり。
あなた
それでも、限界までやらせてください。
そう深々と頭を下げて俺たちに言った。

あなたのダンスやパフォーマンスに対する熱意は昔から感じてた。

ファン思いなとことか、グループ愛が強いとことかも。

だから、あなたのお願いを聞き入れない訳にはいかなくて。
LIKIYA
LIKIYA
誰がやめなさいなんて言った?
あなた
え…
龍
あなたさんならやるだろうなって僕らも思ってたんですよ。
拓磨
拓磨
本当は休んで欲しいんですけどね?
あなた
はいはい、
ありがとうと笑うあなたの笑顔を見て、胸がきゅっと締め付けられた。

今は9月の終わり。

もう、10月がやってくる。

あの笑顔を見れるのも、あと3ヶ月。

そう感じながら、あなたがもっと生きれるよう支えていこうときめた瞬間だった。

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