第127話

無理だった
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2021/08/03 11:39
あなたside
3日間の休暇が終わり、お兄ちゃんと楓雅と共に東京に帰ってきた。

ちゃんと、みんなに離せるかな。

迎えに来てくれたマネージャーさんの車に乗り込み、事務所に向かった。

まずはHIROさんにちゃんと伝えなくちゃいけない。
あなた
失礼します。
HIROさん
あなた、久しぶりの休暇はゆっくりできた?
あなた
まあ、なんとか。
身内に不幸があったという誤魔化しをしてくれたHIROさんには感謝しなくちゃいけない。

…詳しく話さなきゃいけない。

いずれは話すことなんだから、頑張れ私。
あなた
…持病が再発してたみたいなんです。
HIROさん
え…?
あなた
最近ずっと調子悪くて、すぐ苦しくなるし、それで病院行ったらそう言われて、
HIROさん
そうか…それで、入院とかするって?
あなた
…その…進行が早くて、もって半年って。
私の言葉を聞いたHIROさんは固まった。

思いのほか冷静に話せていた自分にびっくりした。

メンバーにも話せるかもしれない。
HIROさん
半年って…やっと年を越せるじゃないか、
あなた
はい、
HIROさん
……半年…
HIROさんはしみじみと感じながら私を見た。

なにを思ってるのかはわからなかった。
HIROさん
メンバーにも伝えるんだぞ。
あなた
わかってます。
HIROさんにそう言われて急に不安になった。

さっきまで大丈夫だなって思ってたのに。

伝えられるか不安になった。
マネージャー
みんなリハ室にいるよ。
あなた
わかりました。
そう言われ、リハ室の前で立ち止まった。

…いつも通りに過ごせるだろうか。

…いつも通りに笑えるだろうか。

…みんなに不調がバレないだろうか。

いや、、何バレないか心配してんの。

なに隠す前提で心配してんの、

しっかりしろ私。

気を引き締めて扉を開けると、みんな嬉しそうな顔をして私を見た。
翔平
翔平
あなたさあああああん!!
あなた
ちょ重い、離れて、
翔平
翔平
その塩対応も3日ぶり…
あなた
元から頭おかしいのは知ってたけど悪化したね。
翔平のこのノリが久しぶりに感じてしまった。

たかが3日なのに。

私の中ではもう1年くらいすぎてる感覚だった。
陣
じゃあ〜あなたも来たことだし始めるか〜。
LIKIYA
LIKIYA
久しぶりにお母さんたちと会えて良かったね。
あなた
はい、良かったです。
優しく笑ってそれじゃあ頑張ろうと言ってくれたLIKIYAさん。

準備が出来るまでわちゃわちゃしてる雰囲気も懐かしくて。

それをあと半年しか感じられないと思うと、涙が出そうで。

それを抑えるのに必死だった。
あなた
はあはあはあ…
いつもより早くあがる息に、誰にも気づかれないよう端に座り込んだ。

やっぱり、いつも通りに過ごすなんて無理だ、

こんなのバレるのだって時間の問題。
壱馬
壱馬
あなた?どした?
あなた
なんでもないよ。
壱馬
壱馬
そう?はい、水。
あなた
ありがとう。
少し回復してみんなの輪の中に戻れば普段のみんながいて。

こんなに心地いいものだったんだと感じた。

みんなの存在がどれだけ大きいのかも。

みんなの笑顔をずっと見てたい、そう思った。

いつも通りに過ごすなんて無理なのはわかった。

でも。

みんなに病気のことを話すことの方がもっと無理だった。

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