壱馬side
1月7日。
俺の誕生日。
前とは違う環境での誕生日。
"彼女"という存在がいての誕生日、
わくわくそわそわしながら家にいると。
あなたはそれだけ言うとまた外に出かけて言った。
あいつは毎回毎回何も言わずに家出るから困るわ。
でも、なにか買いに行ってるのはわかった。
今だって帰ってきた時、両手にスーパーの袋ぶら下げてたし。
あなたが家を出てから1時間。
買い物は長くするタイプじゃないのに何やってんだあいつは。
もしかして変なやつに絡まれてるとか?
だとしたらやばいって、
俺が家を出ようとしたら開いた扉。
普通の顔をしてそういったあなたは小さい紙袋を提げていた。
もしかしてとか期待するけど、あなたは平然としてるから違うのか。
かっこよく英語で言ってリビングに向かったあなた。
なんだよかっこつけやがって。
2人でソファに座ってくつろいでると、あなたが突然甘えてきた。
甘えてくるといつもの倍に可愛くなるあなた。
いろいろと俺我慢できなくなるからあんま好きじゃないんだけど。
そう言ってあなたはDVDをセットをして見始めた。
こいつ…人が見てたのを無視して…
まあ確かに、龍友さんの歌声すごく綺麗だけど。
確かに玲於さんのKRUMPはすごいけど。
はい、今ので川村壱馬、ぷっちんときました。←
俺はあなたを見つめたまま黙っていた。
あなたはなにかを察したようにした。
満足気にニヤニヤしてるあなたがあまりにもムカついたから、押し倒した。
あなたはびっくりしたのか声が出た。
わかったならいい、そう言ってあなたを起こした。
ほんとあなたのことになると余裕ない。
あなたはぎゅっと俺を抱きしめた。
あなたからのハグ、久しぶりかもな。
抱きしめたままあなたは言った。
俺の誕生日、濃いなあ。
あなたがいるだけでこんなにも違うんだ。
またかっこよく英語で決めたあなた。
英語ハマってんのかよ。
寿司が好きな俺からすると結構嬉しい。
まあ、あなたの料理ならなんでもいいんだけど。
2人で手巻き寿司を食べて、2人とも結構食べる人だから喧嘩もしながら食べた。
あなたは寝室に戻るなり、小さい紙袋を持ってきた。
あの紙袋の中に手紙だったらどうしよう。
そんな考えも過ったけどあなたはそんな事しなさそう。
紙袋を渡されて、中を見てみると小さい箱。
正体は俺が欲しがってたネックレス。
あなたが着けてて、めっちゃ気に入って俺も欲しいって言ったやつ。
嬉しすぎてすぐ着けると、あなたに子供みたいと言われる始末。
拗ねてキッチンに逃げたあなた。
可愛いって言われて拗ねるやつ初めて見たわ。
ソファからあなたをチラって見れば真剣な顔して家事をしてて。
ほんといい彼女持ったと思う。
最後の彼女になりそう、いや、ならせるか。
今回の俺の誕生日は、ちょっと特別だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。