第42話

体験
12,042
2020/01/19 01:08
あなたside
ドラマ撮影の日。

この日は祐貴くんも岩さんもいた日で、安心感があった。

同じドラマに出演してる女優さんとも仲良くなれて、いっぱいお話をしたりした。
俳優
ねえ、あなたちゃん。
あなた
………………なんですか。
俳優
今日ご飯行かない?
あなた
このあとは予定があって。
俳優
本当はないんでしょ?いーじゃん行こうよ。
あなた
あの、やめてください。
私の腕を引っ張って無理やり連れていこうとするこの俳優、

怖くて、気持ち悪くて。

どうしたら逃げれるのか私の頭の中はパニック状態で考えられなかった。
剛典
剛典
あなた〜次の仕事行くよ〜
あなた
あっ、はい。
ほかの俳優さんとかが来ると焦るのか、力が緩むこの人。

その隙を見て私は抜け出して岩さんの元へ走った。
剛典
剛典
大丈夫?
あなた
…大丈夫です。
剛典
剛典
強がんなよ。
あなた
わかってます。
岩さんは私の頭を撫でて車に乗った。

私もマネージャーさんがいる車に乗って次の仕事に向かった。

これで収まると思ってた。

でも、あの人は次の日もやってきた。
俳優
さすがに今日は休みでしょ?
あなた
いや、休みじゃないです。
俳優
嘘つかないでいいって。な?行こっか。
あなた
やめてください。
裕貴
裕貴
あなた〜壱馬来てるぞ〜
あなた
祐貴くんっ…
裕貴
裕貴
行こ。
祐貴くんは引っ張られてた腕を強引に解いて。

私の腕を優しく引っ張りながら壱馬の元まで連れてきてくれた。

てか、なんで壱馬…
壱馬
壱馬
このあとRAMPAGEで仕事だから迎えに来た。
あなた
ありがと。
壱馬
壱馬
なんかされてました?
裕貴
裕貴
んー…さすがにしつこすぎだよねあれわ。
剛典
剛典
うん…今まで色んな女優さん狙ってきたっぽいけどあなたは特別違うのかも。
壱馬
壱馬
…そっすか。あなたを守ってくれてありがとうございます。
みんな、私を守ってくれてるのに。

私ももっと強くならなきゃ。

私がそう決意したというのに壱馬は見透かして。
壱馬
壱馬
お前は強くなろうとすんな。今は俺たちに甘えとけ。
そういうの。

なんでもわかるのはなんで?

聞きたかったけど、壱馬のその言葉があまりにも優しくて、ポロポロと涙が出てきた。

壱馬は優しく抱きしめてくれた。

そしてRAMPAGEの仕事も終わって、各自マネージャーさんに送って貰った時。

私の家に着いた時、背後に気配を感じた。

もしかしてと思って見たけど後ろには誰もいない。
マネージャー
あなた?どした?
あなた
後ろに…やっぱなんでもないです。
マネージャー
そうか。なんかあったら言えよ。
あなた
ありがとうございます。
マネージャーさんと別れて家に入った時、突然ピンポンが鳴った。

この時間に誰だろうと思って画面を見ると、
あなた
なんっ…で…
俳優
あなたちゃーん、開けてよー。
怖くて、怖くて、仕方がなくなった。

一人で寝れる気がしなくて。
楓雅(ふうが)
姉ちゃん?誰?
あなた
楓雅…起こしてごめんね。
楓雅(ふうが)
その前にその体勢どしたの。
私は今床に座り込んじゃってる状態。

怖くて腰が抜けたのかな。

楓雅には心配かけたくなくて、大丈夫だよ伝えた。

明日もオーディション。

頑張って欲しいからこそ隠すの。

ごめんね、楓雅。

鳴り続けるインターホンに楓雅は不思議に思って覗こうとした。

でも覗かせないように防いで、楓雅を寝かせた。

次の日も次の日もしつこく私を誘ってくるし、家にも来るようになった。

助けて…

誰か助けて…
俳優
今日はあの男たちもいないんだね…
あなた
………
この人の存在すらが怖くなって。

私は答えることすら出来なくなった。

岩さんも祐貴くんもいない…

仲のいい女優さんはいるけど事情は話してない。

休憩時間になった時、誰もいない部屋に連れてこられた。

どうしよう、助けて岩さん…祐貴くん…
俳優
俺はあなたちゃんがすきなんだよ…わかってくれよ…
雑に抱きつかれて、

気持ち悪くて怖くて身動きができなくて。

急に離されたと思えば顔が近づいてきて。

キスされると思って顔を背けようとした時、

バンッ!!!

扉が雑に開いた。

その先にいたのは、
剛典
剛典
なにやってんだよ、あんた。
岩さん。
俳優
き、今日は撮影ないんじゃねえのかよ…
剛典
剛典
残念ながら監督に呼ばれたんです。もう1回撮り直したいシーンがあるるしくて。
岩さんは私を引っ張ってそばにいさせてくれた。

この人は岩さんを見た途端に焦りだした。

私は怖さがまだ残ってて、足が震えてる。
剛典
剛典
もうこの子に近づくのやめてもらっていいですか。
俳優
俺はただ好きなだけだ!!
剛典
剛典
好きならあなたが怖がるようなことしないだろ。
俳優
あなたちゃんも俺のこと好きだよな?
この人は狂ったように聞いてきた。

怖くて答えられなかった。

答えなんて決まってたのに。

そんなわけないって、
剛典
剛典
あんたが気安くあなたの名前呼ぶな。
俳優
呼ぶこと自体自由だろ!!
剛典
剛典
じゃあなんであんたが名前を呼ぶ度にあなたが震えてんの?
岩さんもどんどん怒る口調になって言って。

これじゃダメ、岩さんが悪者になっちゃう。

私は阻止しようとしたけど、岩さんもちゃんと分かってて。
剛典
剛典
とにかくもうあなたに近づかないでください。
今まで聞いたことの無いくらい低い声で言った。

部屋を出て、私の控え室に行くと、岩さんは抱きしめてくれた。
剛典
剛典
つらかったな…泣いていいよ、辛かった分泣きな。
あなた
うっ…
私は子供みたいに泣きじゃくった。

来た時の岩さん、息切れしてた。

急いできてくれたのかな。

そう考えると岩さんの優しさもしみて。

涙が止まらなかった。

恐怖体験は一生経験したくない。

これが私の恐怖体験。

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