その後、俺たちは何度も回帰を重ねた。
一回目は衰弱死、2回目は遊園地での事故死、3回目はヒーロー基礎の実践訓練で敵が仕込んだ爆発に巻き込まれて爆発死、4回目は雄英に行く前に、あなたの自宅がガス爆発を起こし、焼死。
5回目は、前例のない地震が街を襲い、津波が起きた。あなたはその波に飲まれて溺死。
そんなことが続いた、回帰を重ねる度にあなたの死はひどいものになっていった。
そして、今は15回目。
誰もいない、近くの裏山にのぼって、街を眺めた。
茜色に染まる街を見ていると、あなたのことばかりが思い出される。
もう、辞めたいのに。忘れたいのに。
今更、諦めることも出来なくて。
俺はただ、一人で泣いた。
諦めた方がいい、これ以上あなたを苦しめたくない。
なのに、あなたの笑顔、怒った顔、悲しい顔。
その全てが、俺を離してくれなかった。
心ではわかってる。
もう、あなたを救うことは出来ない。
俺、頑張ったよ。
でも、もうダメなんだ。
見ていられない。
あなたとの出会いと別れを繰り返す度にどんどん酷くなっていく死を目の当たりにして、俺の心はどんどんすり減らされていく。
あなたと知り合う前、何も無い世界がずっとマシだったとそう思えるくらいに。
だけど、その気持ちに蓋をして、俺は何度も何度も。
何度も繰り返した。
何度も春を迎えて、雄英に入って。
何度も…。
だけど、その度に俺はお前を好きになって。
何度も時間を巻き戻す。
お前のせいで、俺の未来、めちゃくちゃだよ。
そして、急に訪れるんだ。
"兆候"はいつも違う。
ある時はただの風。
ある時は、鳥のさえずり。
ある時は、雷の音。
それらが全て、俺からあなたを奪う兆候。
そして、15回目のあなたはもういない。
どんどん死期が短くなっている。
あなたに会えなくなる日も、そう遠くはないだろう。
この時間を戻すことも出来なくなってきている。
あの時の瀬呂の気持ちが痛いほど、よくわかる。
"見てらんねえよ。段々、時間が戻せなくなるぜ。"
その意味がよくわからなかった。
時人さんに会えば、戻せる。
そう思ってたから。
だけど、今回。
あなたが死んだのは…
俺と、出会った日だった。
だから、俺は決意をした。
俺はもう、過去には戻らない。
戻れない。
あなた、俺を許してくれ…
好きな女の子を見捨てて、未来へ進む俺を…
ごめんなさい。
それなのに、この茜色に染まる街並みを眺めては、お前のことばかりを思い出す。
やっぱり、俺はお前のことがどうしようもなく、好きらしい。
俺が、躍起になればなるほど。
あなたは苦しみ、もがき、凄惨な死を迎える。
最初の死がどれだけマシだったか。
せめて。
穏やかに、逝かせてやりたい。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。