第34話

未来から来た
998
2022/07/27 10:40

俺は今日、あなたにあることを打ち明けようと思う。




あること、それは…
未来での出来事。
瀬呂ですら止められなかったのにこの俺が止められるかはわからないが。
それでも俺はもう二度と目の前であなたが倒れるところを見たくはない。
もどってきた以上、どうやってでも防がなければいけない。
それが、俺と瀬呂の悲願であり、約束だから。




瀬呂範太
瀬呂範太
お前に託す。
絶対にあなたを死の螺旋から救ってくれ。

”死の螺旋”それは、因果律を捻じ曲げても防ぐことのできない死のことだ。
因果律というのは…キリがねえからそれはまた今度…。



とにかく、時人さんの個性というのは厳密には時を戻す、ということではないらしい。
俺たちの体感、時を戻しているように見えるが実際は時空を捻じ曲げているのだという。
俺には大してその違いは判らないが…



とにかく…!!



俺は今日、あなたに打ち明けようと思う。
信じてもらえるかはわからない…っていうか絶対信じないと思うけど…
っていうか、俺なら信じないし。
未来から来たなんて、子供でもわかる。
そんなこと言うやつはほら吹きだって。



でも、うまく言えねえけど…
あなたなら信じてくれる気がしたんだ。




上鳴電気
上鳴電気
なあ、あなた…
(なまえ)
あなた
…なんだそんなかしこまって。
あ、お菓子ならやらないぞ…?僕のだ。
上鳴電気
上鳴電気
ちげえよ…w
あのさ、信じられないと思うけど…
(なまえ)
あなた
未来からきた、だろ?
前に聞いたから知ってるって。
上鳴電気
上鳴電気
信じてねーじゃん!!
(なまえ)
あなた
なぜそう思うんだ?
上鳴電気
上鳴電気
だって、”普通”はそんなこと言われたって…
(なまえ)
あなた
ああ、普通はそうだな。
上鳴電気
上鳴電気
…え?

普通は、その言葉はまるで自分が普通でないと言っているようだった。
その言葉が意味することは何なのか俺には見当もつかなかった。



そして、あなたの口から紡がれたのは衝撃の一言だった。



(なまえ)
あなた
お前のほかにももう一人知ってるんだ。
未来から来た男がいる。

俺のほかにもう一人?
今…そう言ったのか??



まさか…そんなことが…?
もしかして…瀬呂が来たのか?
だけどあいつは俺に託す、そう言った。


自分が来るなら託すなんて言わないだろう。
なら…未来から来た男、それは誰なんだ?



(なまえ)
あなた
…電気も、僕に個性を使うな、そう言うんだろう?
上鳴電気
上鳴電気
…。
(なまえ)
あなた
いいんだ。
そいつから聞いてる。
…個性を使い続ければ僕は死ぬんでしょ?
上鳴電気
上鳴電気
…うん。
16歳の冬の日、あなたは冬を越すことなく。
…死ぬ。
(なまえ)
あなた
せっかく未来から来てくれたのにごめんね。
だけどもう、手遅れだよ。
上鳴電気
上鳴電気
手遅れ…?
(なまえ)
あなた
うん。
だって僕の体はもう、とっくに朽ちているから。
確かこっちに戻ってくる前、あなたが死んだ日に保健室で確かリカバリーガールが言ってたっけ。
この子の体は腐った死体だって…。
朽ちると腐る…似ている気がする。
つまり、あなたの体がもうあの頃とかわらないのであれば…
俺はもう、防ぐことができないのでは…?


上鳴電気
上鳴電気
そんな…!


時人さんの個性は時空を捻じ曲げることができるのは、自分が記憶する一定の時点までだと言っていた。
つまり記憶されていない時点、経験されていない時点には戻ることはできない。
俺と、あなたの出会いはこの夏が初めてとなる。
だから、何度もどっても何度なにをしても…
あなたを救うことはできない…





俺はもう…あなたを救うことができないのか?



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