別にからかうつもりはなかったけど、未来でほほ笑むあなたを思い出してはまたあんな笑顔を見たかった。
だけど、ちょっと出来心でからかってしまったが、ラッキーだった。
だって、
こんなに顔を赤くして照れてるあなたを見ると、未来では見られなかった姿にちょっとうれしい気持ちになる。
未来では絶対こんな照れた顔なんて見られなかったし。
目の前のあなたを見ると、大きなグレーの瞳を揺らしながら顔を真っ赤に染め上げていた。
そして、こちらを見た。
…あ、やべ。怒られる!!
あれからあなたの俺に対する態度は一変した。
なぜあんなに冷たかったのかはわからないままでいるけど、とにかく回帰前のようにいや、回帰前よりも俺たちの中は深いものへとなっていた。
遅い。
もう聞こえてるっつーの!!
あなたは~っと、周りを見渡してみてもタイミングよくあいつは不在のようだった。
まあ、こんなことを聞かれてなくてよかったのかもしれない。
こんなことをあなたの耳にいれようものなら…
何て言われかねない。
そんなことになったらあっという間に高校生になって、冬のあの日になってあなたは…
久しぶりにあなたの口から紡がれる俺の名前は、不思議と久しぶりの感じはしなくて。
なんだかすごくうれしかった。
やっぱり好きな人に自分の名前を呼んでもらえるのはうれしいものだ。
願わくば、その口から紡がれるのは俺の名前だけならばいいのに、なんて考えてしまう。
当の本人は、我関せずといった顔で俺を置いて席に戻っていった。
だけど耳の端はなんだか少し赤く見えてそれをみて俺は少し口角を上げた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。