母は娘を抱き締めると
涙を流しながらロッドに感謝を何度も述べる。
しかし娘は何を喋らずボーッと母を見つめている。
その事に違和感を覚えた母は何度も娘の名前を呼ぶ。
だが、娘からの返答はない。
ロッドは焦る母を見て少しだけ眉を下げ
困ったような表情を見せた。
そして暫く娘を見続けていると
突然娘が動き出し母親にしがみついた。
そう言った娘に母は恐怖心が湧き上がってきた。
娘を自身から引き離そうと必死に暴れる。
しかし、幼い少女とは思えない力のせいで
母は抜け出せずにいた。
そして、抱き締められている所から
ギチギチと軋む音がし始めた。
ロッドは先程まで浮かべていた笑みを消すと
右手をあげると指でパチッと音を鳴らす。
すると娘はボコボコと音を立て膨らんでいき
ボンッと大きな音を立てて爆発した。
その様子にロッドは涙を流しながら微笑んでいた。
ロッドは口元に手を当てると
今度は先程の爽やかな笑顔とは違い
不気味な笑みを浮かべた。
ロッドの小さな笑い声は
二人の親子が燃える音によってかき消された。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。