あなたは息を荒げ
自身にナイフを突き刺した男を睨む。
ロッドノープスと名乗った男は
ケラケラと楽観的に話をする。
先程まで笑っていたロッドは真剣な目をして
倒れているあなたに目線を合わせた。
顔を真っ赤にし狂った笑みでそう言ったロッドに
あなたは冷めた目を向ける。
ロッドは目を見開き間抜けな顔を晒す。
その言葉と同時に
あなたはサラサラと霧になり消えていく。
先程の笑みとは一転し
顔を真っ青にして手を伸ばすロッドに
あなたは一層笑みを浮かべた。
そしてあなたは
完全な霧となってロッドから姿を消した。
ロッドはその場で立ち止まり
あなたに向け伸ばしていた手を
ゆっくり開いたり閉じたりして見つめる。
その言葉にロッドが後ろを振り返ると
顔色を悪くし、汗を流して
乱れた息を整えながら話そうとする女性がいた。
そう言う女性の言葉に
ロッドは困ったと言った風に眉を下げる。
感謝の言葉を言う母親に
ロッドは満面の笑みを浮かべ娘の特徴を問う。
母親が素直に服や髪型、どんな子なのか
情報をロッドにどんどん話していく。
ロッドは目を見開くと
母親の背後をゆっくりと指さす。
母親が慌てて振り返ると
そこには確かに、自身の子どもが立っていた。
母親は未だに自分に気が付かない娘へと駆け寄る。
その母の後ろ姿を
ロッドは目を細めて睨むように見つめていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!