第6話

話し合い
3,145
2024/02/28 09:00
白井 瑠華
白井 瑠華
探索結果の共有をしません?
 瑠華の提案に、反対する者は誰もいなかった。
 部屋の床に、全員で円を組むよう座る。香恋も嘉斗と並んで腰を下ろした。

 互いに顔を見合わせながら、誰かが口を開くのを待つ。お互いがお互いを疑っているのが表情から見て取れる。
水原 香恋
水原 香恋
(この中に黒幕がいるんだ……。でも、誰が……?)
 香恋も参加者たちの顔を見つめた。
花宮 嘉斗
花宮 嘉斗
俺たちは≪第一のゲーム≫が終わってから、ずっとこの部屋にいました。
どこにも行っていないので、共有できる情報は特にありません
 香恋も隣で頷き、視線で他の参加者に話を促す。千隼と目が合うと、彼がじゃあ、と口を開いた。
三好 千隼
三好 千隼
オレたちは途中で見つけた休憩室で休んでたよ
守岡 樹
守岡 樹
休憩室とは書いてあったが、
鍵のかかってない部屋にソファがあっただけだ
 樹の補足に、千隼が同調する。
水原 香恋
水原 香恋
(休んでたって、やっぱり具合が悪いのかな……)
 自由行動の前、千隼がふらついていたことを思い出す。
水原 香恋
水原 香恋
あの、
天羽 りる
天羽 りる
じゃあ次はりるたちね
 しかし、りるの明るい声に遮られ、聞くタイミングを逃す。
天羽 りる
天羽 りる
りるたちは【参加カード】を使って
この建物の中を探索してたよ
水原 香恋
水原 香恋
え、【参加カード】?
 聞き慣れない言葉に、眉を顰める。聞き返すと、りるが不思議そうに首を傾げた。りるがシャツのポケットから取り出したのは、一枚のカードだった。交通系のICカードと同じくらいのサイズだろう。香恋には見た覚えのない、真っ黒なカードだった。

 知ってますか、と嘉斗に視線を送ると、彼も首を振る。
天羽 りる
天羽 りる
二人は知らない?
みんな一枚ずつ貰ってると思うけど
 千隼や瑠華も同意するようにポケットから同じく黒いカードを取り出して見せる。
花宮 嘉斗
花宮 嘉斗
……知らないな
三好 千隼
三好 千隼
もしかして、主催者のミスとか?
花宮 嘉斗
花宮 嘉斗
ミス? こんなに重要そうなアイテムを?
三好 千隼
三好 千隼
だって、香恋ちゃんと嘉斗くんは応募してないのに連れて来られたんでしょ?
渡しそびれちゃったか……実はデスゲームにあんまり関係ないとか
水原 香恋
水原 香恋
そうなのかな……
三好 千隼
三好 千隼
≪黒幕探し≫は特別措置だって言ってたし、
本当は探索することを想定してなかったのかも
 千隼の推測に、嘉斗も香恋も納得する。しかし、壱は怪訝そうな顔をしていた。
粕谷 壱
粕谷 壱
それこそ、お前らが黒幕なんじゃねーの?
 香恋たちを睨みつけてくる。
水原 香恋
水原 香恋
(えっ!?)
川瀬 玲
川瀬 玲
確かに、応募してないのに連れてこられたというのは怪しいですね。
一組だけ誘拐してくる理由が分からない
粕谷 壱
粕谷 壱
そうだ!
黒幕なら後からいくらでも理由つけて合流できるよな!
水原 香恋
水原 香恋
そんなこと、
粕谷 壱
粕谷 壱
あ?
 壱に凄まれ、香恋は口をつぐんだ。
三好 千隼
三好 千隼
あー!
 千隼がわざとらしく思い出したような声を上げる。
三好 千隼
三好 千隼
そういえば、
琥太郎くんと大和ちゃんが脱出口を探しに行くって言ってたけど、
見つかったのかなあ
 壱が舌打ちをして、香恋から目を逸らす。
 千隼の質問に答えたのは瑠華だった。彼女は首を振りながら答える。
白井 瑠華
白井 瑠華
いえ、私たちも探してみましたが、それらしいものは見つけられませんでした。
それに、辰巳さんや真壁さんでしたら、脱出口を見つけていた場合、
真っ先に共有してくださったでしょう。
……≪第二のゲーム≫が始まる前に
三好 千隼
三好 千隼
そうだよね。
あの二人、隠しごととかしなさそうだったし
 寂しそうに千隼が笑った。
粕谷 壱
粕谷 壱
出口がねえんじゃどうやってここから出るんだよ!
そもそもオレたちはどうやって連れて来られたんだよ!
天羽 りる
天羽 りる
落ち着いてよイチ
 りるがたしなめようとするが、壱の怒りは収まらない。
粕谷 壱
粕谷 壱
第一お前が連れて来なけりゃこんなことになってねえんだよ!
 怒鳴りつけられりるがひるむと、壱は香恋を睨んでくる。
粕谷 壱
粕谷 壱
自由時間に探索してないってのも怪しいよな!
探されたらまずいもんでもあるんじゃねえの?
香恋とか言ったっけ?
アンタもりるみたいにメンヘラなんじゃねえの?
水原 香恋
水原 香恋
わ、私……探索しなかったのは……
花宮 嘉斗
花宮 嘉斗
休憩しようと提案したのは俺です。
状況が状況ですから、無理をしても良くないと思ったので
粕谷 壱
粕谷 壱
お前騙されてるんだよ、オレみたいに!
天羽 りる
天羽 りる
りるは騙してない!
粕谷 壱
粕谷 壱
うるっせぇ!
 壱はそう言うと、立ち上がり、香恋を指さした。
粕谷 壱
粕谷 壱
お前が黒幕だって宣言してやる
守岡 樹
守岡 樹
それはまだ早い
粕谷 壱
粕谷 壱
あ?
 壱が威嚇するが、樹は気にした素振りもなく、話を続ける。
守岡 樹
守岡 樹
黒幕宣言には証拠がいる。
彼女が黒幕だという証拠は?
粕谷 壱
粕谷 壱
てめえもコイツを庇うのかよ!
さてはお前らもグルなんだな?
だからそんな落ち着いてられるんだろ!
守岡 樹
守岡 樹
失敗したらゲームオーバー。つまり死ぬってことだろ。
死にたいなら好きにしろ
 冷静に言い放つ樹に対して、反対に壱はどんどん冷静さを失い、声を荒げた。
粕谷 壱
粕谷 壱
お前らはおかしいって思わねえのかよ!
どう考えたってこいつらが怪しいだろ!
水原 香恋
水原 香恋
……
 何か言い返さなければと思うものの、香恋は言葉を見つけられなかった。休憩していたときのことを思い出す。嘉斗と、息抜きにした雑談。その、最後の言葉。
水原 香恋
水原 香恋
(あの時の花宮先輩の言葉……『俺のせい』ってどういう意味なんだろう……。
先輩は、もしかして何か知ってる……?)
粕谷 壱
粕谷 壱
何も言わねえってことは、てめぇが犯人だろ!
オレたちをここに集めたのも、あの変なロボットを操ってんのも!
花宮 嘉斗
花宮 嘉斗
水原がデスゲームを計画するはずない!
 嘉斗が珍しく声を荒げて立ち上がった。
花宮 嘉斗
花宮 嘉斗
……こんな状況に置かれて苛立つのも分かりますけど、
だからって誰かを非難していい理由にはならないでしょう
 気圧されたらしく、壱が黙り込む。
 くい、と鎖が引かれ、促されるまま香恋も立ち上がった。
花宮 嘉斗
花宮 嘉斗
このまま話し合ってても時間の無駄だ。行こう水原
水原 香恋
水原 香恋
あ、はい!
 他の参加者のことも気になったが、香恋は嘉斗に言われるがまま部屋を出た。

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