私は、なーくんの胸でひたすら泣いた。
悔しくって、
まだ終わりたくないって気持ちでいっぱいで。
喉が熱くて、
上手く声が出せない。
そう言って、なーくんは私の手を引く。
急すぎて、少し躓いた。
視界が涙でよく見えなかった。
だからなーくんにただ付いて行く。
前を歩くこの男の子は、
やっぱり背が高くて、顔なんか見えなかった。
と、
前を向いたまま、私に言いました。
そっか。そうだね。ごめんなさい。
また私は、迷惑をかけてしまった。
包まれる手は、温かい。
私よりも、随分と大きくって長い指。
とっても、安心感があって、好き。
ぼそっと、呼ばれた気がして返事する。
けど、なかなかなーくんの声は返ってこない。
顔を覗こうとしてもそれは無理がある。
だから返事を待った。
....すると、
なーくんは、
何を言おうとしているのだろうか。
言われた言葉は、
どうしてこんな事を言うのか、って思った。
繋いでいる手が、少し熱くなった気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。