この前みたいに、
普通になーくんを見れなくなった。
自分を呼ばれても、
普通に、何も思うことなく振り返ったのに、
でも、今は
なーくんのその、低い声が
直接心臓に響くようで、
とにかくこの前と全然違くって、
恋を、したんだな。
と。
この人に。
私と違って、大人っぽい。
いつでも余裕げな顔をして。
いつでも仕掛けてきて。
だから、私はいつもこんな調子。
急な問題提起は止めて欲しいです。
こんな時に頭なんか回りませんて。
さっきから私は、
ずっと床しか見てないですよ。はい。
顔なんか上げられませんよ。
恥ずかしい。
なーくんが少し動いた。
その時、シャツの隙間から見えた鎖骨に、
私は過剰なくらい顔に熱を帯びた。
変態か。私は。
熱いなーもう.....熱いあつい___
不意に、腕を掴まれてびっくりした。
なーくんは、ちょっとだけ眉を寄せて言う。
_____なんて、
理解不能な忠告を受けた今日、
なーくんとの始まりの日でした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。