~あなた~
私が出した答えは、
待っていて欲しい。
これが正しいのかは分からないけど、
考える時間は大切だと思ったんだ。
雰囲気を明るくしようと考えてくれているのが
ひしひしと伝わる亜嵐くんの言葉。
普通にしたいのに、
そう思うほど変になる。
普通・・・か、
私、今までどうしてたっけ、?
亜嵐くんに差し出された手も
なぜかすぐに握ることが出来なくて
亜嵐くんは自分の方へゆっくり手を戻す。
心の中を整理する時間が欲しい、
そんな思いを読み取ったのか、
声をかけてくれた。
帰りたいけど、帰りたくない。
わがままな私に、余計泣きたくなる。
こんなんじゃダメだ。
きっとこのままいても楽しめないだろう。
せっかく連れてきてくれたのに、
私ってなんて最低な人なんだろう。
だんだん涙が溢れてくる。
悲しいわけじゃないし、
辛いわけでもない。
亜嵐くんの方がずっと辛いはず。
原因不明の涙で、また亜嵐くんに心配かける訳にはいかない。
急な展開に耐えきれず、私は走り出した。
呼び止める亜嵐くんの声も聞かずに。
電車の中でも、原因不明の涙は止まらない。
考えれば考えるほど溢れ出てくる。
亜嵐くんは、、どんなに辛かっただろう。
好きな人に思いを伝えるけど、
待ってて欲しいと答えを聞けず、
差し出した手も、
相手のために下ろした。
最後は走って行ってしまって
1人残されている。
ほんとに私、最低だ・・・
でも明日は会わなければならない。
学校のせいにして休むか・・・
極力亜嵐くんと接しないか・・・
いや、これはダメだ。
愛梨と拓斗に相談するしかないよな、
あ、
もしかして今・・・
恋愛、、してる、?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!