蝶屋敷から出た後
1度も無一郎はこっちを見てくれない
そりゃそうだよね
柱の恋人がこんな醜態…
“髪は女の命”なんて言うけど
本当にそうなのかもしれない
無一郎がよく褒めてくれた髪だったのに
それがなくなった今
私は_
無一郎は長くため息をつくと
私の方へ振り返った
“これ以上言うとあなたをどうするか分かんないよ?”
耳元で言われると余計にドキドキしてしまう
こんな事どこで覚えてきたんだか…
久しぶりにこうして
無一郎と話せるだけで
とても幸せだ
無一郎はスっと
手を私の方へと伸ばしてきた
辺りはもうすっかり夜なのに
無一郎の耳が赤くなっているのが分かる
あぁ…
何て可愛い人なんだろう
無一郎の手を優しく握る
何だか温かいな
お互い慣れない手の繋ぎ方
だけど確かに心は通い合えたんだ
恥ずかしい…けど嬉しい
そんな気持ちの帰り道
その時無一郎が小さな声で言ったこと
今は聞こえないフリをしておこう
NEXT_
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。