第35話

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1,687
2020/04/01 16:47
蝶屋敷から出た後

1度も無一郎はこっちを見てくれない

そりゃそうだよね

柱の恋人がこんな醜態…
あなた

あの…ごめんなさい
鬼に髪を切られるなんて…

“髪は女の命”なんて言うけど

本当にそうなのかもしれない

無一郎がよく褒めてくれた髪だったのに

それがなくなった今

私は_
無一郎
無一郎
はぁー…
無一郎は長くため息をつくと

私の方へ振り返った
無一郎
無一郎
その髪も似合ってる
あなた

え…

無一郎
無一郎
可愛いよ
真っ先に言えなくてごめん
でも…
あなた

……っ//

“これ以上言うとあなたをどうするか分かんないよ?”
耳元で言われると余計にドキドキしてしまう

こんな事どこで覚えてきたんだか…
無一郎
無一郎
今までの事もごめんね
あなた

無一郎は悪くないよ
私の方が…

無一郎
無一郎
いや…
あなた

じゃあ、お互い様…ね?

久しぶりにこうして

無一郎と話せるだけで

とても幸せだ
無一郎
無一郎
あなた…
無一郎はスっと

手を私の方へと伸ばしてきた
無一郎
無一郎
今はこれで我慢するから…
辺りはもうすっかり夜なのに

無一郎の耳が赤くなっているのが分かる

あぁ…

何て可愛い人なんだろう
あなた

うん

無一郎の手を優しく握る

何だか温かいな
無一郎
無一郎
行こう
お互い慣れない手の繋ぎ方

だけど確かに心は通い合えたんだ

恥ずかしい…けど嬉しい

そんな気持ちの帰り道
無一郎
無一郎
家に帰ったら…ね?
その時無一郎が小さな声で言ったこと

今は聞こえないフリをしておこう
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