目を開けると、そこは知らないような、知っているような景色があった。
私の顔を覗き込む人。マスクをしていて、真っ白な服を着ている。
涙が自然と出るんだ。よくわからないけど。
マスクの人が喋る。話してる内容はよくわからないけど。
どうやら私の名前はあなたというらしい。
…なんだか懐かしい気がする。
私が生まれてから既に15年経った。
15歳のある日、急に頭痛がして、倒れてしまった。
誰かの声がする。…だけど、聞き覚えのある声だった。
その瞬間に、さっきとは比にならない頭痛が襲ってきた。待って…これ夢じゃないの…!?
その瞬間、思い出した。
全部、全部。
フィッシャーズのことも、当時の全てのことも。
涙が目に溜まり、視界がぼやける。
忘れちゃいけない人。
忘れちゃいけないこと。
全部、全部思い出した。
…会わなきゃ。
皆んなに、謝らなくちゃ。
『また皆んなで遊ぼう!』
そう心に誓って、眠りについた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!