ここは何処…?
そう呟いた
しかし誰もその問いには答えない
ここから先私はどうなるのだろうか
そう思うとものすごい寒気が私を襲う
私は右手の拳で涙を拭う
その時不意にバスに乗る前のことを思い出した
家を出てからバス停の道のり誰一人合わなかった
毎日家の周りを掃除しているおばあさん
ゴールデンレトリバーのラルクを連れて散歩をしているおじさん
必ず元気に挨拶をしている小学生の男の子
誰一人会わなかった
そして車も一台も通っていなかった
家の中には誰もいなかった
テレビをつけても全部砂嵐
どうなってるのかさっぱり分からない
もしかしてと思うが、異世界という場所に連れ込まれたのだろうか
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
いや…そんなはずはない
なんの根拠もないのに私はその時そう思ってしまった
今日は疲れたな
そう呟き土の上に転がり眠ってしまった
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!