突然、全員に聞き馴染みがある、鈴の転がるような優しい声が頭上から降ってきた。
それに気づいたぬらりひょんが上を見上げると________。
自分が一番関わりを避けていた、
『人間』
が、謎の布に乗ってこちらに近づいてきていた。
ジバニャンとUSAピョンは泣きながら名前を呼ぶ。
フユニャンとコマさんも喜びに声を上げる。
そしてウィスパーは、ケータとあなたが来てくれたことから号泣しながら瓦礫の影から出てきた。
言い終わらないところで、ウィスパーは触手に強く巻きつかれた。
そのおかげで2つの目ん玉がポロリと・・・←
ぬらりひょんは忌々しげに呟く。
ケータとあなたは冷や汗を垂らしながら言っているが、イナホは相変わらず能天気な事を言う。
「勝ち目がない」と瞬時に悟ったケータは、わざとらしく笑顔を作って片手を振った。
焦るあなたの後ろからイナホは身を乗り出し、
ケータに詰め寄った。
目をハートにしているイナホ。
それを見ていたぬらりひょんはあなた達を睨みつけると、声を荒げて一直線に触手を放った。
勢いよく飛んできた触手から逃れるように、あなた達を乗せた布が後ろへ飛ぶ。
さらに、あなた達に向かう触手をフユニャンが殴り蹴り飛ばした。
フユニャンに言われた3人は自分の身体を見下ろす。
コートやジャケットで過ごしていた人間界とは別に、薄く通気性の良い涼しい服装に変わっていた。
またもや迫りくる触手に攻撃しながら、フユニャンは3人に問いかける。
あなたは小さく首を傾げ、話し始めた。
あなたはほっぺを人差し指で掻きながら、自分たちに起こった事を思い返した。
______________
ちょっと私たちに色々あって、まだハチ公前にいたとき・・・
急に、赤を基調とした絨毯みたいなのが私たちのところに来て、
端っこの方で絨毯の上を指したの。
そしたらイナホちゃんが、
私たちの手首を掴んで、その絨毯みたいなコレに乗って・・・
___________
最後にあなたはそう締めくくる。
ケータとイナホもそう続く。
フユニャンは話を最後まで聞き終わった後、太い触手を蹴り飛ばしながらあなたに言った。
あなたはそう返し、妖怪ウォッチ【Uプロトタイプ】がついた左腕を頭上にかかげる。
黄色い帯が巻き上がる中で、あなたはメダルをセットした。
〜〜〜〜〜♪
【ladies and gentleman,フシギ族!】
【フシギ♪フシギ♪フシギ族!♪】
軽快で楽しい音楽に乗って、バクロ婆が姿を現した。
出てきたバクロ婆はぬらりひょんの顎にひっつき、妖気を放つ。
取り憑かれたぬらりひょんは、小さく呟いた。
ポツリポツリと呟くぬらりひょんは、先程までの表情が嘘だったかのように目を伏せながら、言葉を零していた。
"エンマ大王様!何故人間と妖怪の交わりを許可なされているのです!"
"・・・"
"先代は・・・人との交わりを禁じられた・・・!
わたしは認めませんぞ!!人間は悪しき存在!
このままでは、妖怪も悪影響を受けてしまいます!!"
"・・・そうかなぁ。
案外、好きなんだけどな。『人間』!"
ぬらりひょんの回想は、そこで終わりを告げた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。