君が居なくなってからも、時は過ぎていった。
ただ暑い暑い日が過ぎてった。
頭のおかしいクラスメイトもネグレクトな母親もここにいる。
なのに。
君がどこにも見つからなくって。
君だけがどこにもいなくって。
何度も私は君を探した。
誰もが平然として生きてる。
君が死んだのに。
私はお葬式に出なかった。
君が死んだこと、認められなかった。
いや、認めたくなかった。
そして私は君を"作った"。
逃げたかった。
君がもういないんだっていうその真実を認めたくなかった。
そして君に対する罪悪感と独りじゃ抱えきれない苦しみに、後悔と、
何かをなくした消失感だけが残った。
ごめんねって、何度も謝った。
あの夏の日を、今でも鮮明に思い出す。
私はずっと探してた。
君に言いたいことがあったんだ。
九月の終わりに思い返した。
六月のあの日を繰り返す。
あの日香った、雨の匂いを思い出しては泣きたくなった。
君に言い残したことがあったんだ。
今日、私はそれを伝えに来たんだ。
それがきっと、私にできる、最大限の美琴への恩返しだから。
そして私は合わせていた手を解き、閉じていた目を開く。
目の前のお墓を一度じっと見つめ、立ち上がった。
隣の彼に声をかけられ、そちらを向く。
そう言って、彼はハンカチを差し出した。
そう言われて頬に触れると、指先が湿った。
美琴に、泣き顔なんて見せたくなかったのに。
そんな弱音を吐く私に、彼はため息を吐いた。
私は、コクリと頷いた。
ありがとう。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。