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第74話

《外伝》狭かった世の中
230
2023/02/05 12:35
父親視点



...そして、今に至った
シルク父
アイツらの父親の地位捨てて、な。

店長(オーナー)
店長(オーナー)
...
シルク父
何で、あの時「良い人」つったんか、今じゃ分からんし、答えをしる術は無いが
シルク父
...初めから、計算済みだったかな



開口一番に「今日死ぬ」と言ったのも、


俺が、父親として何も成せていないことを悔いているのも


...もしかしたら心中する、なんかカマかけて父親として、人としての威厳を引き出させたのも...全部





嚆矢こうしとして、決めていたのかもしれない









シルク父
...美味かった



最後の一口を飲み切り、小さく音を立ててカップを置く






シルク父
最後まで話、聞いてくれてありがとうな
店長(オーナー)
店長(オーナー)
いえ、寛いで頂けたなら充分ですよ

シルク父
...本当に




代金を支払い、店を背に歩く。
店に入る前は、あんなに暗く、霞んでいた視界が嘘みたいだ

























―...


シルク父
?



話し声がする
少し年配の女の声が、誰かを呼んで、




絹張さん・    ・    ・    ・ったら〜!これ忘れてるっ!

シルク父
っ!?


「絹張」それは、




俺の、いや俺たちの、




苗字








絹張
あ、ごめんなさい笑ありがとうございます田中さん
んも〜気を付けてね?お腹の子供さん休ませてあげてね?
あっ、まだ旦那さんに言ってないんだった?あらヤダごめんね〜!
絹張
あはは、まだ旦那じゃないですってば笑
...でも、ありがとうございます






絹張、そう言われた女は、終始笑顔で去っていった



あの女、...暁に酷く似た顔で



















シルク父
...世の中、狭いもんだな








漏れ出た様にして呟いた言葉は、




その狭い世の中に驚くほど順応に、消えていった。













《外伝》―end―

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