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第22話

紫の騎士は思案する
初めは、気にくわないやつだと思った。


憧れている騎士たちが必死で訓練している館に乗り込んできたんだから。
おまけに、大人顔負けに堂々としている。


レベッカお嬢様。


噂はよく聞いていた。
離れていてもここは彼女の家、ドランバーグお抱えの館なのだし。


ワガママで乱暴で高飛車。
ドランバーグ家の血筋もあり、騎士を毛嫌いし貶める。


そんな奴がどうして、ここにいる。



理由は明快だろう。



バカにするために来たに決まっている。
ドランバーグ夫妻がケチるせいで、館ははっきり言ってボロボロだった。


修繕の知識もないのに直しているせいでツギハギだらけ、武器も十分に揃わない。
時には異臭もするしシャワーだって全く足りない。


他の騎士団はもっと良いところだと思うのに。
何が優雅な白薔薇だ。


騎士に守られているくせに、騎士をないがしろにする一家が許せなかった。


お金を数え、もっと良い訓練を受けさせてやりたいと嘆く父の背中を知っている。
宝石に湯水のごとく金を注ぎ、高級な馬車でアクセのように顔の良い騎士を連れて出掛ける公爵夫妻を知っている。



憎らしかった。
恨めしかった。


立派なドレスを身に纏う、ワガママ娘に腹が立った。
両親の寵愛を当然の如く受ける令嬢が許せなかった。
だから挑発した。

彼女は案の定怒りっぽかった。

だから言った。

騎士をバカにしているのだろうと。

彼女は案の定館に来なくなった。



三日どころか一日で来なくなった彼女に胸がすく思いだった。


下手をしたら不敬で首が飛ぶかもしれないと思ったが、さすがにそんなことはなくて安堵していた時。



メイドが、訪ねてきた。
メイドは顔面蒼白で、「レベッカ様を助けてください」とすがり付いていた。



不思議だった。
あの娘をこれだけ想う人がいることが。


メイドは頼る相手が思い付かなかったらしく、とりあえず知り合いのザルクを訪ねたということだった。ざわざわと心が揺れた。


なんだ。
何があったんだ。



自然と館を飛び出していた。
メイドから聞き出した場所に行くと、炎天下の中館の騎士でも滅多にしないような鍛練をこなす少女の姿があった。休憩もない。


体の限界はとうに来ているだろう。
濁った瞳が痛々しい。



俺は、彼女の姿に衝撃を受けていた。


騎士をバカにするだなんてとんでもない。
彼女は──。
昔の俺を殴ってやりたい。



とりあえず、何か休ませなくてはと声をかけるが聞こえないらしい。
水をくんでぶっかけると、ようやく焦点があった。


「……久しぶり、バカ野郎」


小さな少女に、呼び掛けた。
──謝る、ために。