「──と、いうわけです」
騎士団と夜狼の共通点は、お嬢様の教育に悪いだけのむさくるしい男だということだけだと思っていた。だけど、もうひとつ共通点がある。
レベッカを大切に思っていることだ。
騎士団長のスパルタにも耐え、はきはきとして賢い。
憎らしいドランバーグの子だと思っていただけに、第一印象は最悪。
しかし、第一印象と全く違うとわかり騎士団は揃ってレベッカを可愛がっていた。
夜狼は、美味しい食べ物に釣られたりもするが、
度胸と、敬愛する番長を助けてくれた恩義があり、レベッカに傾倒している。
加えてメリーとその弟のルカ。
レベッカが信用している姉弟だ。
大人数での会議だったが、その目的はレベッカのためだ。
「……そんなことになっているのか」
ルカが青い顔で頭を抱える。
エドガーも珍しく渋面だ。
「ドランバーグ一家、とりあえず殴りてぇ」
怒りを露にするギルバートをルカがバカにして罵る。
「そんなことをしようとするなんてお前の頭には本当に脳みそがつまっているのか? レベッカへの風当たりが強くなるだけだぞ」
「あぁ!?」
とはいえ、事実なのでギルバートは何も言えない。
「貴族への暴力だ。お前ら、一族ともども死刑にされたっておかしくないぞ」
エドガーにたしなめられ、ギルバートは今度はあぁ、とさえ言えなかった。
大好きな父親が自分のせいで殺されるなんて死んでも死にきれない。
「じゃあ……どうやったらあいつを助けられるんだよ……」
自分の無力さが歯痒い。
友達を……大切な人を。助けられない。
「方法は、ないわけではない」
エドガーの冷静な一言に、ギルバートは目を大きく開いて飛び付いた。
「教えろ!!」
ルカがギルバートの肩を掴む。
「おい、お前…レベッカとどういう仲なのか知らないが、お前だけが助けたいわけじゃない。ここにいる皆がレベッカを助けたいと思っているんだ。落ち着け」
「……っ」
自分と同年代の子供に言われると応えた。
「勿体ぶって教えないクソ野郎にはこうするのが一番だ」
ルカは咳払いをすると──
「黒狼番長エドガーの恥ずかしい事件そのいち、酒場で女主人に──」
「うわああああああああ! 話す! 勿体ぶったりしないから!」
情報屋を舐めてはいけない。
悪魔の笑みを湛えたまま、ルカはエドガーに無言で話すよう急かした。
「……わかった。貴族の問題に首を突っ込みたくなかったんだが、しょうがねぇな」
あいつを助ける方法。それは──
「結婚だ」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。