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第44話

新たな日々の始まり
「……わかった」


私の懇願に、渋々という顔ではあるが頷いてくれた。

ぶっちゃけ、婚約は気が進まない。
だけど、だけど、だけど。
いつかは私も政略結婚をする身になる。

私の一存では決められないから、じきに両親のもとへ婚約打診の話が来るだろう。


彼らはそれに飛び付くのだ。


私の運命はすでに乙女ゲームの世界からズレた。
それでも慎重さは欠かせないが、これまでより気を張る必要もない。

好きなことをしよう。
好きな人達と楽しもう。
私が、私でいられる、その時まで。


あの男に嫁がなければいけない、その時まで。


夜狼や領民たちと騒ぐのはとても楽しくて──


帰りたく、なかった。


ーーー

いつからだろう。

前までは、外聞を気にして私に暴力を振るうことはなかったのに。

娘だと、嫌悪を滲ませながらも認めてくれていたのに。



いつから、両親は

私を殺したいと思うようになったのだろう。

それほどまでに憎まれたのはどうして?

外聞が気にならないほど私を憎悪しているのはどうして?

私を娘だと呼ばなくなったのは、どうして?
知っていた。


心のどこかではわかっていた。

全部自分が悪いんだと。


──両親から向けられる殺意に対応する時間は、楽だ。
鍛えた反射神経なら武芸に通じていない二人の攻撃など、赤子のようにいなすことができる。

ただ、致命傷でないならばできる限り避けないようにしているし、


彼らの罵倒や嫌悪を露にした叫びに耳を塞いだこともない。


ただ、それを受け入れる。
受け止める。


受け止めているときは、痛みと同時に安堵もする。
変態じみた感覚ではなく、私の罪を罰してくれているような気がしていたから。
「お前の姉だよ」

「姉上、どうぞよろしくお願いします」



ついに、この時がやって来た。
目の前にいる義弟は、天真爛漫な笑顔を浮かべている。

久しぶりに両親が見せた微笑みも愛情も、そのすべてが義弟に注がれている。


血の繋がった私ではなく。


この光景を。
ずっとずっと知っている。

そしてわかってもいる。


私は、望んではいけないのだ。
望むことすらおこがましいのだ。

兄や義弟のようにとまではいかなくても、両親の愛を一欠片でも。



もはや羨ましいとさえ思えない。


愛なんて、私に一番縁がないものなのだから。