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第1話

第一部 走馬灯のように
──苦しいよ。
なんでこんなに苦しんだろ。

走馬灯のように、様々な景色が頭を駆け抜けていく。


「ごめんね、レベッカ」と笑うお兄様の顔。
お兄様は、妹よりも婚約者を選んだ。それだけだ。

お兄様がいなくなって、おかしくなった我が家。
お母様は閉じ籠り、ぶつぶつとおかしなことを口走るようになった。

昔は、あんなに仲の良い家族だったのに。


お父様なんて、「お前は大事な道具だからな。ドランバーグ家存続のために必要だ」と言って私を閉じ込めた。この小さな部屋に。


お庭に出たいよ。



きっともうすぐバラが咲くんだから。



庭師が言っていたのを聞いていたのよ。

みんな大好きな、ドランバーグ家の象徴、白いバラ。
優雅で気品があって、ちゃんとトゲも持っている。



そんな家なんだから。
そのトゲは家族を守るために使うの。


家族を傷つけるために使ったりしないんだから。



そういう伝統を持った家だって本に書いてあった。
覚えているのよ。

……あれ?


私って本が読めたっけ?



まだ家庭教師も雇っていなかったはずよ。なら……どうして?
どうして、本を読んだ記憶があるの。


どうして、私が婚約破棄されて勘当されて平民になって……。
そして、柄の悪い連中に売り飛ばされて……寂しく死んでいく、そんな本を読んだ記憶があるの。




おかしい。

だって私は杠美雪レベッカで──……え?



あぁ、そうよ。


なんで今まで忘れていたんだろう。
ジグソーパズルのピースがぴたりとはまるみたいに、私の記憶が重なった。
そうだ。


私は杠美雪という女子高生で、交通事故で死んで。
恋愛小説の悪役令嬢、『レベッカ・ドランバーグ』に転生したんだ。



そう気づいた瞬間、私の意識が浮上した。
「──げほっ、げほっ」
浮上したところで、閉じ込められているという状況も、


この苦しくて仕方がない状況も変わりはしなかった。



前世の17歳の姿ならどうにかなったかもしれないが、今は非力な5歳の体だ。
窓から外に出たりドアをぶち破ったりすることはできない。


声も枯れて助けも呼べない。


苦しくて苦しくて、仕方ない。
小説通りに進むのだとしたら、私はまだ死なない。


でも、苦しくて仕方のない熱に死んだ方が楽になるんじゃないかなんていう最悪の考えすら頭を掠めはじめていた。




そのとき。


「レベッカ様!?」