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第27話

友情
「何で、逃げるんだよッ……」



息が、止まるかと。思った。

怒っているだろうと身を小さくすれば、その声に滲むのは──切望だ。
確かに怒気も含まれている。
だが、それだけじゃない。


「俺がまたッ、お前の気に入らないことをしたのかよ!」


目を見開く。
違う。
そうじゃない。


首を横に振れば、「じゃあ何でだよ」と呟かれる。
自分の感情を持て余し、困惑した表情のギルバートに、私は。


答えることができない。



ギルバートに、いつかあの命令をしてしまうかもしれないことも。
ギルバートに憎まれることも。
ギルバートに自分が殺されてしまうかもしれないことも。


何もかも、怖くて。
「また隠し事か…!」


ぎゅ、と唇を引き結ぶ。


「お前は……ッ、ッ! 俺は! お前のことを……ッ」



目をカッと見開いて。

ギルバートが、私に。



「友達に、なれたと……! ようやく仲良くなれたと思っていたのに!」


それは勘違いだったのかよ、と狼狽した様子で続けた。




ひゅ、と。
私の喉が鳴る。

──私には、仲間がいない。

親も兄も、私を嫌い、私の居場所はない。騎士だって、ドランバーグ家の私を憎く思っている筈だ。
夜狼のあいつらは胡散臭くて信用ならない。
私にとって信頼できるのは。

いつ解雇されてもおかしくない、したっぱメイドのメリーと。
月に一度程度しか会えない、メリーの弟、ルカだけだ。



この二人だって、確実に信頼できるかはわからない。
だけど……私が信じたいと願った。
そうでも思わないと……心の支えがない私は、どこかで壊れてしまいそうで。

レベッカやヒロイン、ヒーローたちと違って。


私は弱いから。強くはなれないから。


「私と……友達?」


アホみたいにオウム返し。
この10ヶ月。10ヶ月である。
ライバルとして互いに切磋琢磨したつもりであるし、私は。ギルバートを。



「あぁ」

鍛練の時をはじめ、ぶっきらぼうで乱暴で思い込みが激しくて。
その上ファザコンで、剣バカで、負けん気が強くて。レディーファーストなんて言葉も知らないような、バカ。甘いものは、嫌いでなかったようであるが、私は彼のことをさほど知らない。


長い時間を共に過ごしながら。
やはり内心、意図的に一線を引いていた。


だって彼はまず間違いなくヒロインの味方だ。
彼はヒーローの一人なのだから。
だから……私の敵だ。

でも、それでも。
ギルバートからの気持ちを聞いて、望んでしまった。

その二文字の関係が、あまりにも魅力的に思えて。


突如現れた仲間の存在に、例えそれが今だけのものであったとしても。
欲しい、と──


「私を貴方の友達にしてくれるの?」


思わず、すがるような声が出た。

「あぁ、勿論ッーーッ」


ギルバートが答える。
そして、私を正面から見据えて……固まった。


「……レベッカ?」


私の頬を、とめどなく濡らす涙は。
「ぜんぶぜーんぶ、あんたのせいよっ!」


ギルバートに、思いきり、頭突きを見舞ってやった。