第97話

説教と
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2021/11/06 11:00
 ギルバートとの話が終わると、今度はルカがやって来た。

「……話は終わったんですね。それじゃあ、心置きなく言わせてもらいますけど、貴女、本当にバカですね。一人で勝手に浚われていって、俺たちがどんな思いだったか想像できます!? しかも、貴女が兄に頼んだ伝言先はエドガーだけ……いや、わかってますよ。コンラッドさんと俺たちは面識がほぼありませんし……でも、それでもですね!」

 一拍を置き、ルカの怒濤の説教が再開される。

「俺たちのこと、『守ろう』としましたよね。確かにこのギルバートがヘマをしたのは確かです。俺だってもっとよく立ち回れたかもしれない。でも、六年間の絆をこいつの眼球一つなくなったぐらいで見捨てないでくださいよ!」

「ルカ、それたぶんお前じゃなくて俺が言うべき台詞」

「お前がいつまで経っても言わないからだ! このバカお嬢様はきっちり説教しても右から左に流れるからな。言わなかったら尚更伝わらないんだよ、この鈍感!」

 ルカが私にもギルバートにも刺々しい言葉を投げつける。

 どれも……愛情に溢れているから怖くはないけど。

「で、何か言うことは?」
「ごめんなさい」

 ルカ、エドガーみたい。
 この三人の中だと一番大人っぽいかもしれないよ。

「よろしい。いきなりあのエドガーに告白をしたときはついにとち狂ったかと想いましたが。俺たちだけでなくアラン殿下も見ているところだったんですからね」

 あ、あう。
 ぐうの音も出ないよ。

 因みにアランは、長年自分の優秀さにかまけて激務をこなしていた弊害で、病院に強制入院させられている。奴隷制度は法に触れていないので裁かれることはないが、それでも奴隷たちに恨まれていることも事実。これからの人生は苦労が絶えないだろう。
「あと、俺、貴女のことずっと好きでしたし、これからしばらくは忘れられないので、好きでい続けることになると思います」

 さらっと話されたルカの言葉に目が皿になる。
 ルカが……私を、好き?

 え、ええっと。

「恋愛的な……?」
「そうですよ。よくわかりましたね。いつもの貴女なら『自分も皆が好き』で済ませてしまいそうなものなのに」

 つんと尖らせた言葉。
 咄嗟に「ごめんなさい」と言おうとしたのを止められる。

「……言わなくて良いです。こっちが言っておきたかっただけですし。それでは、俺はまだやることがあるので。行くぞバカ」
「え、ちょっと……!?」

 ルカがギルバートを引きずって歩いていく。
 いつもより早口で余裕の無さそうだったルカの背中に、言葉をぶつける。

「……好きになってくれて、ありがとう!」

 ルカが振り向いて、微かに笑う。
 そして今度こそ、行ってしまった。

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