「リーダー、お連れしました」
思ったよりもしっかりした場所のようだ。
案内されたところは部屋の地下だった。
乱雑で酒臭い一階とは違い、見るからに高価な調度品が並べられ、
家具も貴族が好んで使いそうな物だ。
応接室と言ったところか。
そして、もっとも注目すべき中央には趣味のいいソファとテーブルがあり、
上座に緑髪の男性が座っていた。
男は古代ギリシャのキトンのような物を着用している。
シンプルな物だが布の高級感、異国のような雰囲気、そしてなにより
男は自分の魅力を理解しているのだろう。
ちらりと見える筋肉質な肉体に思わず唾を呑んだ。
いけないいけない、よだれが出そうだ。
「ドランバーグ様、ようこそ夜狼の本拠地へ」
女をたらしこんでいそうな優男。
少しタレ目で涙黒子。
まさにフェロモンの塊だ。
20代半ばといったところか……若い。
「急に来てすまなかったわね。準備は整っているようで有り難いわ」
「恐れ入ります」
そこでメリーが震える声で抗議した。
「失礼です! せめて立って挨拶を! 礼儀がなっていません。それに上座は──」
「メリー」
名前を呼んで制止する。
メリーの言うことはもっともだ。
しかし。
「こちらが急に押しかけたのだし、礼儀を欠いているのはお互い様よ」
「ははは、ドランバーグ様は話のわかるお方のようだ」
子供だからとナメるつもりもなく、
初っぱなから交渉を有利に進めようという貪欲さが伺える。
隙もない。困った。
せめて上座に座りたかったが、これでは無理だろう。
お忍びとして来ている身だし。
「申し遅れました。私はレベッカ・ドランバーグ。他の者は付き人です」
「私はエドガー・ギンジール。以後お見知りおきを」
ふむ。
私は勧められるままに椅子に座った。
おう、ふかふかで気持ちいいじゃないか。
「正式なものではありませんので、できれば儀礼はここまでで本題の話を聞きたいのですが」
「構いませんわ」
会話のペースをとられている。
ぐぅ。
仕方なく本題を述べようと口を開きかけたところで、
ルカの視線に気づいた。
なんでそんなに見るんだ。
私が可愛いからか?
にしては妙に真剣そうだし──ぁ。
そういうことか。
私の付き人であるルカも私のカードなのだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!