戦った後の興奮した状態で、半ば勢いで言った告白。
あれから二週間。
私はまだデファレストにいた。ギルバートやルカ、夜狼もいる。
サラは両親と再会できたと手紙を送ってきたし、メリーとザルクも手紙が……50通くらい送ってきた。みんなに心配をかけたけど、敵を騙すにはまず味方から。
しおらしく浚われてあげたのだ。
場合によっては……本当に、皆を守ってアランと結婚しても良かったんだけど。
コンラッドの頼りなさ具合に、今まで自分が頼ってきた背中がどんなにすごいものか、一時の……ギルバートの失明による恐怖心から、色々と迷っていたものを吹っ切れた気がする。
極めつけは、アランとの恋バナだ。
私には、好きな人がいる。
フェロモンたっぷりで、ふざけた大人で、でも……すごく、優しくて。頼りになる人。
キスをしたのを思い出しただけで胸がとくん、と高鳴る。
まぁ……エドガーは私の頼みのせいで色々あって国にとんぼ帰り。報告を上げたり、夜狼のしでかしたことを揉み消したりと色々奔走している。
忙しいのはわかっているけど……私のせいだし……。
でも、キスをしておいて手紙の一通も届かないのは、やっぱり不安になる。
私みたいにエドガーもあの場の勢いでやったことで、実は私のことそんなに好きじゃない、とか。
だっていかにも遊び人って感じがするもの。
私の身分からして妻にはなれるだろうけど、愛人がたくさんいたりしたらどうしよう。
「……カ。レベッカ!」
「……ん!? あ、ごめん。ぼーっとしてた」
薄紫の目が不安げに瞬いている。
「いや、別に……良いんだけど、さ」
ギルバートがこんな風に何かを遠慮するなんて珍しい。
「別に良くないよ。気になることがあるなら言って。何でも聞くよ?」
「……俺、あの時お前に仕えるって言ったけど、お前を守ることは……難しい、んだ」
失った片方の目。
それが戻ることは永遠にない。
ようやく脳のスイッチが入る。
「それで、俺はデファレストに残りたい。ここは奴隷が多く売られていた。優秀な剣士も祖国よりたくさんいる。そんな中で片目の剣士を見つけたんだ。隻眼でも十分に戦い方があるって知ったんだ。だから……ルカに頼んで、コネを作ってもらったから……隻眼の剣士を師匠に仰いでみようと思ってる」
でも、と。
ギルバートが真っ直ぐに私を見る。
「一時的だ。お前を守れるくらい強くなったらまた戻ってくる。ずっと、お前に仕える」
だから、デファレストに残るのを許してくれないか、と。
尋ねるギルバートに、私は大きく頷く。
「うん。待ってる。何年でも、何十年でも」
私たちは、それぞれの道を見つけ初めているみたいだ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。