第50話

救世主か、悪党か
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2021/03/20 11:00
「姉上!」

やめて。

そんな純粋な目で見ないで。
私はあなたの救世主なんかじゃない。


「……ぁ、えっと」
「その……」


私は養女でもなんでもない。血統書つきの公爵令嬢だ。
そこらの貴族の子供なんかが身分で私に勝てるはずもない。


「まぁいいわ。私の義弟を見れば何をしていたかわかるもの」

床に座り込み、ゴミやジュースでぐちゃぐちゃになった義弟。
別にこいつを助けたいとまでは思っていないし、関わりたくない。いじめていた連中にとびきりの罰を与えたいわけでもない。

さっさとここから離れたかった。


「もうこんなことしないで。二度目はないわ。……意味、わかるわよね?」


家ごと潰す。
脅しをこめて見ると、彼らは震え上がった。

うん。

もういいよね? 私はいらないよね?
じゃあここから離れるから。
踵を返してまた隅っこに戻ろうとした……そのとき。

「うわあああああああああああああああああああん」

一気に安心したのか、ノアが大声で泣き出した。
周囲の子供たちも釣られて泣き出す。

脅しがききすぎてしまったかもしれない。


そうなれば、私はここから離れられないし、大人たちもこちらに注目する。
もういっそ私も一緒に泣こうか。と、思ったとき。


「何をしているの!!」



母の金切り声が響いた。

頬に衝撃が走り、私は投げ飛ばされてしまう。
うっすらと目を開けると、私を叩いたらしい父親と、ノアを抱き締める母の姿があった。

母はドレスにジュースがつくのも気にしない。
父は、一応私をグーではなくパーで殴るだけの理性は残っていたらしいが、ズキズキと頬が痛い。口の中も切れてしまった。


「……血が繋がっていないからなの? そんなことで弟をいじめるの? あなた、姉として恥ずかしくないの!!?? 友達と多数で弟をいじめるなんて!!」


違う。
違うのに。

──もう、どうでもいいや。


──もう、疲れた。


どうせわかってくれないんでしょ。
それなら説明するだけ無駄だもの。
助けなんて来ない────はず、なのに。


「レベッカ」


「……ッ!?」


まだ成長途中の男の子の声。急いで目を向けると、ここにいるはずのない人がいた。

「ルカ?」

どうして。
貴族でもないルカが、ここにいるの?


助けに来たぞ・・・・・・

紫色が目の前に現れる。
なんでギルバートまで、ここにいるの?



まさか。

その時、広間の扉が大きく開け放たれ、フェロモンを放つ男が悠々と歩いてきた。


「エドガー?」


エドガー・ギガンゼル。
初め、その名前を聞いた時から違和感があった。


何故なら、ギガンゼルという名前は王家・・のものだから。

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