第99話

男子会、のような
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2021/11/20 11:00
 エドガーはドレスコードを決めかねていた。
 デファレストのことがようやく一段落つき、延期していたメリーとザルクの結婚式を行うことになったのだ。二人の希望で慎ましい式になるそうだが、レベッカが楽しそうに準備を進めていたし、実際に自分が挙式することになった時の参考にもなる。

 招待されれば参加しない手はなかった。

 ギルバートやルカももちろん参加するのだが、ルカは姉の結婚ということでレベッカ並みに準備を徹底している。あいつがいれば全て完璧にこなすんだろうなと考える。
 レベッカとエドガーは天才肌とでもいうのか、あることに関して飛び抜けた物を持っているがそれ以外はてんでダメだ。

 対してルカは念入りに準備をして完璧にこなすことができる広い視野と人脈、手腕を持っている。

 レベッカの従者でなければエドガーが貰いたいほど優秀な人材だった。
 大金を積んでもルカはレベッカから離れそうにないが。

「レベッカは紫色のドレスを着ますから、貴方も揃いで選べば良いでしょう。加えて貴方の目の色のブローチでも贈ってあげれば完璧です」

 ドレスコードの相談に行くと、疲れきった様子のルカが流暢に答えてくれた。

 お礼だと言って少し仕事を手伝う。


 まだやるといって聞かないルカを嗜め、休憩を取らせた。

「……俺、レベッカに告白しましたから」

 唐突な言葉に紅茶を噴き出しそうになった。


「……は、はあ!?」


「そうしないと、伝わらないなって思っただけです。まぁ、心配はしないでください。俺はあんたで良いですよ。あんたがレベッカを幸せにできるなら、それで構いません」

 告白はしたが奪うつもりはないと聞き、安堵する。

 自分がレベッカに関して余裕がないことが悔しい。
 レベッカからの熱烈な愛の囁きに脳が溶けるかと言うほど幸福を感じたし、まだ夢心地だ。
 好きだった少女から好きと言われて嬉しくないはずがない。

 だが、夢心地……まさに夢のようで。

 落ち着いた後に「やっぱり好きじゃない」なんて言われて、夢から覚めてしまいそうで。

 不安がないと言えば嘘になる。

「──でも、もしもレベッカを不幸にするようなことがあれば、俺はあなたがたを力づくでも引き裂きます」

 本気だ。
 でも、おかげでこちらも覚悟が決まった。

「お前には渡してやらないよ。レベッカを幸せにするのは俺だ」

 



◆お知らせ
次回、100話目で最終回です。

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