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第2話

メリー
チョコレートブラウンの髪の毛の少女が、私を見て顔を青くした。
どうやら昼食の時間で、メイドが食事を運んできてくれたようだ。


この部屋のドアが開く、数少ない時間のひとつでもある。

助かった。



「メリー、わた、し……ゴホッ……」
「あぁ、レベッカ様! 今すぐ旦那様とお医者様をお呼びいたします!」



メリーは最近入ったばかりの少々ドジなメイドだ。
今までの私は、悪役令嬢らしく、かなりのワガママ放題だった。


それでも小説の中のレベッカよりも幼いためか、悪戯や嫌がらせのレベルも低く、ワガママな小娘の域から出ないものの、確かに悪役令嬢の片鱗はあったと言っていい。


家族には良い顔をして振る舞っていたが、そのぶん使用人にはつらくあたっている。



特に年の近いメリーは被害にあっていた。


私は、今までメリーにした数々の嫌がらせに恥ずかしくてたまらなくなった。
自分がやっていた側だからわかるが、レベッカは理由もなしにそんなことをしていたわけじゃない。



ただ、構ってほしかったのだ。
まだ5歳で家族の誰にも振り向いてもらえないレベッカは使用人たちと遊ぼうと思っていた。




だけど、公爵令嬢であり、現在次の当主に最も近い私に悪戯の加減を教えてくれる者などいるはずもなく、手加減を知らない年頃であるゆえの残酷な仕打ちを行っていた。




靴に泥やミミズをつめたり、服に落書きしたり、突然水を浴びせたり、気に入らないと何回もお茶をいれなおさせていたり、というものだ。




自分でやっておいてだが、最悪だ。


使用人たちからしたらたまったものではないだろう。
「まって、メリー……」
一生懸命、彼女のワンピースを引っ張った。
すると、メリーは泣きそうな顔で私を見てオロオロする。

心配してくれているんだ。



あんなに、ひどいことばかりしたのに。




謝罪の言葉が口をついて出た。



「ごめん、なさい……ごめんねさい、メリー……いっぱい、ひどいこと……」



メリーの顔がみるみる歪む。
背景も混ざって溶けていく。



目が焼けるように熱かった。



あぁ、泣いているんだとわかった。



いつぶりだろうか。
こんな風に泣いたのは。




「良いんです。私は、小さい弟がいるので慣れていますし……弟と比べたらレベッカ様の悪戯なんてかわいいものですよ……あ、これ不敬ですかね」
あぁ、温かい。


私は、メリーに許してもらったことに安堵して、そのまま急速に意識が薄らいでいく。



「レベッカ様! あ、旦那様! レベッカ様が!」




メリーの声が遠退く。
それと一緒に私の意識も。



ぷつりと途絶えた。