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第33話

お守りのおまじない
さすがにメリーを連れていくことはできない。


私は、エドガーから下ろしてもらうと、メリーの手を包むように握りこんだ。



「行ってくるわ、メリー。待っていて頂戴」

「嫌ですっ……」



……本当は、こんなことしたくないのだけど。
彼女のためだと唇を噛んで覚悟を決めた。


「これは『命令』よ」


雇い主からの正式な命令ならば、メイドであるメリーに逆らう術はない。
メリーの目にみるみるうちに涙がたまった。


「ルカ。ルカとメリーは避難していて欲しいの」


そしてルカを呼ぶ。
姉弟をバラバラにしておくことはできない。



「俺は!」
「お願い。ルカにしか頼めないの」
ルカのチョコレートブラウンの瞳を見つめる。
彼は、息を飲み、そしてため息をついた。


「……わかった」
「お願いね」

よし、これで二人片付いた。


「ギルバートは……」
「俺は絶対! 絶対! ついていくからな!」

だだっ子かよ。


地団駄を踏んで主張する様子が、その場にそぐわなくて脱力する。

「……好きにして。ただ、自分の身は自分で守りなさいよ」
「お前も守ってやるよ!」
「私はザルクがいるから……」


ここぞとばかりに護衛騎士を指差した。

ザルクはちょうどあくびをしているところで、なんだか締まらない。


「私もマイプリンセスは守りますし、小僧が荷物にならないなら勝手にしてくれて構いませんよ?」


にこにこしながらエドガーが私の肩に手を添えてきた。
お前は楽しそうで何よりだよ。
「エドガーに守ってもらわなくて結構。私だってそれなりに戦えるのよ」


エドガーの手を払いのけ、愛剣を抜く。
映えある初陣に、微かに震えた。……怖いんじゃないし。緊張しているだけだし。


「じゃあ、行きますかっと」


エドガーはギルバートを抱えた。
きょとんとするギルバートが面白くて笑っていると、私はザルクに抱き抱えられた。


お姫様だっこではない。
完全な荷物扱い。


ギルバートの笑い声に辟易する。はぁ。




「お嬢様…!」
「メリー?」


メリーが目もとの涙をぬぐって近づいてきた。


「お守りのおまじないです。……お気をつけて」


そっと額にキスをされる。

「メリーも、気を付けて」



ザルクが地面を蹴った。

遠ざかっていくルカとメリー。
近づいていく爆発音と喧騒に、はやくも……。




「怖くない怖くない怖くない怖くない……」



ビビリな私は、格好つけたことをちょっぴり後悔していた。
ちょっぴり。