第43話

決意を胸に
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2021/02/06 11:00
 避難所。
 私は悠々とそこへ入っていく。

「レベッカさん!」
「交渉は…!」
「番長は…!」


夜狼のメンバーにすがりつかれるようにして、私は立つ。


「勿論、成功したわ」


示しあわせたタイミングで、エドガーを始め、多くの街の人たちが避難所に現れる。
一瞬のタイムラグをおき。



ワッッッ!!!!


と。
鼓膜を殴られたような歓声が巻き起こる。


大の男が泣き崩れ、いつも理性的な行動をしているはずの人たちが私をもみくちゃにする。
鼻水まみれの顔で感謝されたときは焦ったけど、エドガーがどれだけ慕われているのかもわかった。
「レベッカさん万歳! 万歳! 万歳!」


胴上げをされているのは私だけではない。
巻き込まれたルカ、エドガー、ギルバートもだ。


ザルクなんてとっとと逃げている。
くそう、なんで助けてくれないんだ。



ひとしきり騒いだあとで、ギルバートとルカに詰め寄られた。


「……あのとき、何言われたんだ?」



あの時って……最後の条件のことよね。


「あぁ、うん。私の可愛さに免じて今回は勘弁してあげる☆ …って言われたの」
「「はぁ?」」


二人とも、信じられないという顔をしている。


そんなに信じられないことかな?
「私ってほら、可愛いし? 何も不思議じゃないと思うんだけど。きっと、ヒトメボレしちゃったのね。しょうがないわ。この可愛さと色気だもの!」


うっふん、とポーズをとる。


ドン引いた顔の二人が私から離れた。おい。


「未来の番長は可愛くて賢くて頼りがいがあるなぁ」



あっはっは、と笑いながら、エドガーは私を抱き上げる。
否。目が全く笑っていない。
これは抱き上げたというよりも私を捕まえたのだろう。


ちっ、わかってはいたけどエドガーは誤魔化されてくれないか。



「んー、でしょ? てことでちょっと下ろし……ぎゃんっ」


むにぃ、と頬をつねられる。



「嘘つけ。どんな条件で人々も……俺も解放させた? あの化け物王子は、そんなヤワな条件を提案したりはしない」
あー、えっと。


「お金…?」
「そんなわけないだろ。…お前、本当に何て言われたんだ」


──婚約のことは。
言えない。

あれから、少し時間があったから自分なりに考えてみたんだ。


小説の中のレベッカは、この国の第二王子の婚約者で、それが原因で色々あって国外追放になる。
だけど、今の私はどうだ。
他国の王子の婚約者。


もう、小説に関わる可能性は薄いだろう。


追放される可能性も考えなくていい。
平民になる可能性も考えなくていい。


これ以上頑張る必要も、エドガーたち夜狼と接点を持つ必要もない。



「お願い……聞かないで。その時になったら言うし、本当にヤバイと思ったら頼るから」
私はすでに方針を固めた。
彼らは大切な友人だ。必要だとか必要じゃないとかで関わることをやめたりしない。


これからも、きっと一緒にいる。
ただ、私が結婚できる年。デファレストに嫁ぐ年。
この国で、成人は16歳。


私が16歳になるまでは。夜狼のみんなと、一緒にいたい。

それまで、婚約のことは誰にも言わないと。決めた。

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