緋山からそう言われたのは今から1時間前
まぁ、知ってる通り俺らはまだお互いのことを
「藍沢先生」,「白石」と呼んでいる
別に呼びたくない訳じゃない
むしろ相手に呼んでほしい
でもいざ自分から言うとなると
恥ずかしいのと今までのキャラが変になりそうで
言えない
俺がお互いの呼び方について悩んでるのに
そんな呼び方をされるとイライラする
彼女はどう思ってるのだろうか
ー・ー・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・―・
緋山先生に突っ込まれてから1時間がたった
確かにそうだと思った
私だって藍沢先生に名前で呼ばれたい
でも自分からは恥ずかしくて言えない
あーあ相談すれば良かったかなぁー
でもみんな忙しいし、心配かけたらいけないよね
二人は答えが見つからないまま
定時を迎えた
俺たちは二人で並んで廊下を歩く
いつもは何か話ながら歩くが
今日は一言も喋らなかった
車について俺は運転席に
彼女は助手席に乗る
車を発車させる前に俺の口が開いた
何だこの会話は、などと思いながら
区切りが良いのでここで車を発車させる
少しすると彼女があくびを始めた
おいおい、呼んでみただけだと?
かわいすぎかよ
あんまり驚かせるなよ 事故るぞ
さっきからすごく視線を感じる
赤信号になったので
チラッと彼女のほうを見てみると
目があってしまった
彼女は答えない
代わりに目で『名前で呼んで』と訴えている
わかってる、次は俺の番だって
でも恥ずかしい
最後の信号を進み、家に着いた
とりあえず降りて玄関に向かう
家に入ると彼女は眠そうにソファーに座った
初めて彼女の名前を呼んだのに返事がない
聞こえなかったのか?
彼女のほうに近づいてみると……
最悪。
なぜ今寝る?!
誰のせいで今俺の顔が赤くなっているのか……
はぁー
いろんな意味で疲れた
俺も少し寝よう
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーEND
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。