あ!と気付いたときには
もう手遅れだった
いや、あの、その、えーっと…
わたし、ばかだ
何してるんだろう
恥ずかしさで
一気に顔が熱くなる
上手く言葉が見つからず
ごまかすので精一杯だった
ま、いいや
そういうことにしとく!
とりあえず家に入って
少し落ち着いたら?
モトキくんは
表情一つ変えず
淡々と話す
テンパってるのは
わたしだけ
それと同時に
ショックの気持ちも大きくて
じゃぁね…と呟いて
トボトボと家に入った
扉を閉めて
ふーっと息を吐く
わたしは
モトキくんに
好きだと言ってしまった
ばかだ、ばかだ、ばかだ
後悔はしている
むしろ
後悔しかない
もっと
ちゃんと言いたかった
そう思うとモヤモヤして
心臓がぎゅーっと痛んだ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!