私は、加賀美インダストリアルで働く社員。
そして今、隣のデスクで私に缶コーヒーを
差し出してくれている彼は
私が教育係を任せられている
新入社員の甲斐田くんだ。
えへへ…と頭を搔く彼。
これが後輩の中で今1番モテている男か……
そんなことを考えながら
気づけば彼の顔を凝視していたようで、
今にもぷんぷん、という
効果音が聞こえてきそうな怒り方だ。
私たちはいつも通り他愛もない会話をしていた。
私の背後から突然現れたのは
この会社の若き社長であり、
私を他社から直々に引き抜いた上司である、
加賀美ハヤトさん。
隣でワナワナとしている甲斐田くんは
見えていないのか、私に話しかける社長。
甲斐田くんは何かを察した様子で
すたすたと帰ってしまった。
お言葉に甘えて、社長の車に乗り込む。
しばらく車が走っていたが、途中で気づいた。
すました顔のまま答える。
……どういうこと……?
何も分からないまま、
気づけば目的地に着いていた。
気の抜けた返事をして、渋々お邪魔する。
『よかったら』
と、ワイングラスを渡される。
お世話になっている人だ、断る訳には行かない。
普段は大人な雰囲気の社長だけど、
時折見せる子供のような表情が可愛らしい。
大好きなお酒とのタイアップ。
嬉しかったんだろうなぁ……
そんなことを考えていたら
視界がグラグラと揺れてくる。
ふふ、と微笑む社長の顔が目の端に見える。
そのまま私は意識を手放した。
落ちる瞬間、社長が何か言った気がしたけど
聞き取ることは出来なかった。
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リクエストありがとうございました…!
奥手な社長がうまく連れ込むシュチュエーション……難しい…!
でも楽しかったです!ありがとうございました✨
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!