壁1枚隔てた先から聞こえてくる罵声。
紛れもなく、これは叶くんの声だ。
クスクスと笑いながら声を聞く。
ほぼ毎日、かなり長時間配信をしている彼。
少し寂しいけど、いつも見れない彼の一面を
こうして聞けるのは少し楽しかったりする。
聞こえてくる声から、一緒にゲームをしている相手が葛葉さんだとすぐに分かった。
吸血鬼の彼と仲が良いことはよく知っている。
でも何でだろう、男の子の友達だけど
自分より近い関係な気がして
少しだけ悲しくなる。
そう呟いて、ゲーム中の彼の部屋にそっと入る
忍び足で地下より、
彼の背中にぎゅっとしがみついた
ぽかんとした顔でこちらを振り返る彼。
彼の顔越しに見えるゲーム画面では
彼のアバターが敵に撃ち抜かれていた。
くるっともう一度ゲーム画面に向きを変える彼
……彼女が近くにいるのにいい度胸だ。
そうおもった時、彼は言った。
そのまま配信が切れた。
自分がしたことだけど少し申し訳なくなる
葛葉さんにはなんでもお見通しのようだった
ヤキモチを焼いていたけど、
悪い人ではないのかもしれない…
さっきまでの殺伐とした空気はもう無く、
いつもの優しい声で語りかけてくる。
ちゅ
プツン、と
葛葉さんが話切る前にdiscordを切る叶くん。
そういって上目遣いで椅子に座ったまま
ぎゅーっと強く抱きしめられる。
わがままを言ったのは私の方なのに
自分がかまって欲しいからと言ってくる彼。
どこまでも優しくて、どこまでも意地悪だ。
にこにこと微笑む彼は
さながら天使のようだった。
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リクエストありがとうございました…!
やっぱりChroNoiRはお互いに喋らずともわかる関係性だといいなー!という妄想です!()
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。