ほら、海都が私のこと呼び捨てにしたから、あの子ヒソヒソなんか言ってるじゃない。
あっさり認める。
やっぱりコイツ、気に食わない。
しばらく黙ってると、海都が私の腕を引っ掴み、屋上へ向かって走り始めた。
結局、離してくれたのは屋上に着いてからだった。
そう言って戻ろうとした。
そう言われて、ピタッと私の歩く足が止まった。
そうだ。
今教室に行ったら完全に皆が敵になってしまう。
何されるかわかったもんじゃない
そう言いながら、私の腕を掴んで、屋上のフェンスの近くにあるベンチに座らせた。
私は、答えられなかった。
私が今まで海都に抱いてきた感情は、他の何者でもない
「嫉妬」だったから。
私は、羨ましかったんだ。
海都が、私より成績がいいこと。
海都が、勉強出来るのに友達が多いこと。
海都が、文武両道の完璧人間であること。
海都が、私より勉強してないのに「天才」であること。
海都に、両親がいること。
全てが私より優れているから、「嫉妬」を「嫌い」にしていたんだ。
そう答えるのが精一杯だった。
そこまで言い終わるか終わらないかで1時間目終了のチャイムがなった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。