家に帰り、宿題もやらずノートを開く。
つい笑みが零れた。別に珍しいことでもないのに、彼女のおかえりが嬉しくて堪らない。
彼女はコンパス。決して方位磁針ではなく、円を書くための文房具の1種。何故か俺は彼女の声を聞くことができ、そして彼女は俺の愛している人だ。
俺が彼女をケースの外に出してやっている間、そんな質問をしてくる。
コンパスでありながらも俺たちの関係はいつだって対等だ。俺が偉そうに命令することもないし、彼女も本気で俺の幸せを願っていてくれる。
それは本気で嬉しいけど…………俺はコンパスといられるだけでいいのに。
ブツブツと文句を言い始める彼女。顔が赤くなることは無いが、声で恥ずかしがってるのがわかってまた愛おしい。
会話も長くかなり焦らされているので、俺は少しコンパスの足(だと自分は思っている)を開いてみた、
開く大きさをもっと広げてみると、彼女は小さく喘ぐ。
そういい彼女がまた可愛らしい声を出す。本当に可愛らしい、愛おしくて堪らない。
可愛いらしい声の馬鹿に、俺のそれはそり上がっていく。
確かにSEXは出来ない。子孫繁栄に貢献していないかもしれない。でも俺はそれでもいいのだ。
周りになんと言われようと、彼女を愛しているから。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。