窓の外を眺めると、そこには流れていく街並み。
とはいえ、そこは少し田舎臭かった。
ガタガタと揺られていた体が、突然止まる。
すると、運転席の人物がこちらを振り返った。
降りてみると、そこは山のふもと。
直感的に分かる。
領域。
肌で感じる呪力量も大きく、緊張が走った。
私は領域に向かって歩きながら、後ろに立っている補助監督に呼びかける。
私が1歩領域内に足を踏み出すと、後ろで補助監督が帳をおろし始めた。
全身が入った瞬間、針が刺さったように肌が鋭い痛みに襲われる。
流石は特級。
さっきので気づいたかもしれないが、これは簡易領域ではない。
ただの領域だ。
つまり、それだけの力量と呪力量があるということ。
ほーお……?
しばらく進むと、そこには特級呪霊2体が待ち受けていた。
あ"ーーー気持ち悪いなぁ……
うん。ここまでは報告書通り。
もしこの2体が力を合わせることでこの領域を完成することが出来ているのなら、どちらかを倒せばこっちのもん。
私はそのうち1体に向かって走り出して、叫んだ。
その瞬間、私の右手に短刀が出現する。
すると、呪霊がそれに反応して手のひらを重ねて両腕を前につき出すと、右腕を後ろの方に引く。
左手から右手にかけて光の線が描かれる。
………なるほど。
弓矢的な、ね?
遠距離向きの呪霊ならこっちのもん。
私は身を翻すと、呪霊の横を通り過ぎる。
次の瞬間_____呪霊は矢を放って………
横っ腹から何かが吹き出して、そのまま倒れた。
何回みても気持ち悪い……
………領域が、揺らがん。
ここにゆったりと流れる呪力も、匂いも。
ってことは、もう一体がラスボスか……
こちらを振り返っているもう一体は、怒り狂ったかのように大きな呪力を放ち、こちらに向かってくる。
あぁ、なるほどなぁ
近距離向きの呪霊。
呪霊は私の顔面の目の前に拳を突き出すが、私はそれを避け、後ろの方……
山の一部が崩れたと思われる土砂の影に隠れる。
この土砂は領域を囲うようにある。
向こうからも見えへん。
さっき、確認したからな。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。