緑谷が入院する病院。
気配を消してドアの前に立ってみると、
中から声が聞こえてきた。
飯田と緑谷の声だろうか。
会話のすべてがわかる訳では無いが、
声のトーンや、少しの単語なら掴めた。
やっぱり、勝己を助けに行くつもり。
まあ、それは勝手にしたらいい。
私には関係の無いこと。
とりあえず任務さえ遂行すれば、あとは
知りませんでした。
で通る。
きちんと"私のいない所で"作戦立てろよ、
お前ら。
私は花束を病室の前にそっと置いて、
その場を去った。
ーーーー
緑谷side
薄ピンクの花々に、華やかな黄色のワンポイント。
僕の思い違いかもしれないけど、
これを連想させるのは……
あの人も僕らを応援してくれてる。
どこを聞かれてたのか分からないけど、
多分大方察しているはずだ。
……本当に暖かい人だな。
すると、飯田くんは少し顔をほころばせて、
こう言った。
やっぱり、菱川さんはすごい人だ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!