私は開いた手の指と指を交差させ、胸の前に持ってくる。
すると、私と呪霊の周りを、黒いドロドロとした何かが取り囲み、ドーム状と化した。
明るくなって上を見上げれば、そこには綺麗な月があった。
私がそのまま目を閉じれば、呪霊がもがいているのが分かった。
何故だろう。
すべてが、分かるのだ。
この領域の全てが、手に取るように分かる。
私がふわりとステップを踏めば、そこにきちんと足場ができた。
本来、この領域には地面がない。
ただただドロドロとした呪力が広がっているだけで、もがいたって、沼にハマっていくように堕ちていく。
私は階段を踏むように、右足を少し上げてみる。
するとそこには、きちんと階段が出来ていた。
私は階段をあがって、下を見つめる。
呪霊が苦しみもがく姿が……この上なく綺麗だった。
気づけば、そこは固い地面の上。
領域を収束し、出血が多すぎて倒れたのだろう。
私が慌てて身を起こせば、そこにはまだ私の呪力気配があった。
立ち上がって辺りを見回すが、そこには何も無かった。
呪霊の領域も。土砂も。補助監督も、車も。
帰ったのか。
あ"ーでも。
淡い薄ピンクのビーズたちが地面に散らばっていた。
前出かけた時、硝子とお揃いで買った……私の一目惚れの相手。
すぐに硝子も気に入って、硝子はスカイブルーのを買ってた。
私はそれを拾い集めてポケットにしまうと、再びその場にしゃがんだ。
向こうでかすかな呪力反応がする。
そうか。この事件の真相が分かった。
その前にちょっと……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。