一緒に住む事になった。
来年から、悟は一年生のクラスの担任になる。
今よりも忙しくなるのは確実と、会える時間も少なくなると言う理由から。
映画を観ながら、お茶をすする彼を見つめていた。
思えば、学生時代のあの頃、私は自由を手に入れる事ができるなんて1mmも思っていなかった。
高専が敷いたレールに乗るだけの、道具にしか過ぎない。
自分らしくある人生を諦めていた。
そして、私をそこから救ってくれた張本人と一緒に同じ時間を過ごすなんて、誰が想像できただろう。
悟は私をずっと好きでいてくれた。
私も悟をずっと好きでい続ける。
毎日着けていたけど、色んな思い出がネックレスにこもっている。
社会人となり新しく歩み出した私には、一段落した思い出のジュエリーとなっていた。
あの頃は悟と遠距離になったから、御守り変りで着けていたって理由もあったしネ…
今は悟が隣に居るから、ネックレスが無くても不安にならない。
確かに渡した物を着けて貰えないのは、気になるし嫌なのも分かるんだけど…ごめんね。
心の中で、そう呟く。
次の日はブラブラとウィンドウショピングからスタート。途中、悟の洋服を取りにまわった。
いーから、行くよ。
スタスタとジュエリー店を目指し始める。
店に着くと、アポなしだからか
慌てて五条家の担当さんが出てきた。
「五条様、本日はいかがいたしましたか?」
ビックリし過ぎて、声が裏返る。
悟は含み笑いで私を見る。
特別な部屋に通され、担当さんがリングをセレクトして持って来るのを待つことになった。
お待たせいたしました。と担任さんが数点リングを持ってきた。へ~と彼が前のめりでリングを見始める。
独占したい、て言われ胸がキュンて鳴った。
…て言われても・・・
どれも素敵だし、かわいいなぁ。キラキラしてる。
値段も気になるし。選べないよ・・・
良くお似合いですよ。と紳士な担任さんが言う。
私も良いなぁって思ったリングだった。
細かなダイヤが散りばめられいる。
リングなんてちゃんとしたの着けたこと無いし、まして左の薬指て…恥ずかしいけど…
彼の彼女って関係性が確立された様で、
素直に嬉しかった。
え゛、本当に?!
有無を言わさず決定し
ラッピングしてもらっていた。
お店を出て、彼宅に帰宅。
その途中もリングの下りでドキドキが止まらない。
―悟宅―
顔を覗き込みニコニコしてくる。
いつもこんな時、イジワルな笑みを浮かべる彼。
自分でも良くわからない感情。
リングの意味合いを私は重く捉えてるみたい。
…結婚?とか。な訳ないかぁ…
ソファーに座り、隣に座るようトントンとソファーを叩く。
何となく分かっていたことだけど、本人の口から言葉にして言われると、切なくなる。
私の目を逃がさないようにロックする。
彼がそんな事を言い出すとは思ってなかったから、私はフリーズしたままだった。
スカイブルーの箱を取り出し、リボンを外す。
そして、私の左手薬指にリングを通した。
このリングのチョイス、良くない?似合ってるよ。
いや~、センス良いよね僕ってば。ハハ
リングをなぞり、おどけてみせる。
彼の持つ、強さも弱さも全て
愛しすぎて胸が張り裂けそうになる。
フッと微笑んだ。
私の唇に軽くキスをした。
もっと確めたくて、
私からも長く優しいキスをする。
もう、何も怖くない。
悟があの時、私を助けてくれたように、
私が、彼の全てを守り抜こうと。
そう笑って、
テーブルの上のポッキーを私に食べさせた。
私は悟に、呪術を掛けられた。
もしかしたら
悟は私にもっと前から呪われていたの知れないね。
ハッピーエンドの術式は持ち合わせていたのかも。
幸せを与え合う呪いなら、喜んで。
これからの2人にのために。
END
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。