こいつのこう言う飄々としたノリが、クズ呼ばわりされる由縁なんだろう。
何言ってんだろ///
いつもここに居れば、しゃべって、お菓子食べたりしてんじゃん。
あらためて言葉にされると
///恥ずかしくなるんですけどぉ///
顔全体がカーっと熱くなる。
五条は笑いながら冷蔵庫からポッキーを出し、ドカッとソファーに座りスマホを見始めた。
こんな調子で、からかってくるコイツは何考えてるのか、いまいち掴めない。
なに目線よ。
ホントは何時か祥子に言われた言葉を思い出し、心臓が飛び出しそうにドクドク鳴っている。
端正な顔立ちに、サングラスの向こうには
吸い込まれそうな青い瞳。
長身で、サラッとした白髪。
ポッキー食べる姿すら、絵になる。
大いにモテるんだろーな。
にしても、五条があたしを?
…いやいやまさか。
まさかそんな訳ないと、頭の中で繰り返す。
スマホから目を逸らさず、淡々と。
・・・ダメだ。意識してしまう。
平然を装って、レポートを書き始めるけど、全然書いてる内容が入ってこないよ。
とりあえず、書いてるフリだけして、心臓の音を消すのに必死だった。
スマホ見ながら、淡々と。
こっちも見ずに、暇潰しされてる感Max。
ネタ無いなら、無理に話し振ってこないでよ。
でも、皆が羨ましいんだ。
使命をもって、どんどん前進していく。
そんな姿がキラキラしていて、いつも眩しい。
所詮、籠の中の鳥には自由なんてないんだ。
ここにいる以上高専の思うがまま操られ
必要なくなったら、あっさり消されるんだ。
何かのために役立つ事はできない。
あたしも、五条みたいに然るべき道にすすみたかった。強くなりたかった。
自分を信じてる真っ直ぐな目に
弱音を吐く自分が惨めに映る。
五条には、分かってもらえるはずない。
知られたくなくて、ウソついた。
んーと、伸びをしながら、私の方に向かって来る。
は・・・なんで不機嫌?
サングラスの向こうの瞳に私が映る。鋭い視線に、私は目を逸らした。
10分経ったから帰るわ。
ヒラヒラと背中越しに手を振り出ていった。
話したって何も変わらない。
自分で決めるしかないんだもん。
そんなにハッキリ言わなくたっていーじゃん・・・
そのままになったポッキーを、冷蔵庫に戻した。
五条side
学長室に入るあなたを見た。
あれは報告書を渡しに行く感じじゃない。
顔が引きつってたし。
ウソついてんじゃねーよ。
にしても、今日は見れなかったな~…
笑う時のエクボ。
何かイー感じに片方。ペコ~て。
いつだったか、エクボにポッキー刺したら超キレてたっけ。けっこう刺さって地味にウケた。
でも、今日は見れなかった。
あいつの事気にしてやれば
「五条には関係ない。」だってさ。
あっそーですか。って、マジ
すっげームカついた。
(ドスッ)壁を蹴る
秘匿死刑の可能性って、なんの事だよ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。