カフェ
やっぱり覚えてないか。
久しぶりに2人でお出掛けなのに、これは先行き怪しくなりそうだなぁ…
へー、オレのせいなんだ。
と言ったっきり、何も言わない。
私は医療系の大学に入学し、後に研究室勤務を目指してた。
明らかに不機嫌になっている。
はい、キレてる。
この調子だと、煽ってくるか、機嫌悪いまま居座るか。どちらにしてもしんどくなる。ご機嫌とりしても通じないし…
思い通りにいかなくなると、スマホを見始める始末。そんな態度にもいい加減イライラしてくる。
先に席を立ったのは私だった。
それから五条からは何の連絡もない。
卒業を控え、同時に寮を出る準備を始める。
こないだの件は、私が謝る事なんだろうか…
五条が続けられないならフッてくれたらいい。
祥子が心配してくれていた。
夕食に誘ってくれて、少しホッコリする。
先日の話をした。あの日、ムカつくだけで席を立ったケド、根底はいつも五条に私の事で迷惑を掛けたくなかった。ただそれだけ。
だから、きっと遅かれ早かれ別れる選択をするのかも知れない。
数日前に五条は、夏油と再会したらしい。暴走し姿を眩ました彼に、五条は最期の手を掛けることができなかったそうだ。
五条の気持ちを思うと、胸騒ぎがする。
弱い人間じゃないけど、心の支えは唯一夏油だけだったんだろう。失ったモノが大きすぎる。
私は今の彼に何ができるだろうか。
ダメもとで五条へ連絡してみようかな。
LINE
返信がきた。
任務だったんだ。
―校庭のベンチ―
確かに、思い詰めてる感はある。
口数も少ない。
唯一無二の存在の夏油を自分の手で終わらすなんて…でもそれが五条に課せられた使命。
五条は大切な親友に、何かを気付かされたのかも知れない。
迷わず自分を信じて進んだらいいよ。
五条の選ぶ道は、きっと間違ってない。
いまだに夏油が起こした事件を信じられていない感じもあり、こんなにも沢山の感情にブレーキを掛けている彼を初めて見た。
膝の上に乗ってる固く握りしめた手に、私の手を重ねる。
こんな事くらいしかできなかった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。