教室も医務室も、静かで、その静寂が胸を締め付ける。
振り向くと教室の入口に寄りかかった五条がいた。
久しぶりに姿を見て、頭が真っ白になる。
どーしよう…声が出ない…
私、また逃げるの?
思わず、鞄を手に取り教室を出ようとする。
五条の前を通り過ぎようとした時
ドンッと長い足に止められた。
顔が上げられない。
胸が張り裂けそうで、何かが込み上げて来る。
ね。こんな時でもヘラヘラと。
もぅ、どーでもいいや。
何かが途切れた。
ポロっと涙が流れた。
頭の中がぐちゃぐちゃする。
何も言わずに五条は足を下ろした。
立ち去ろうと歩き出すと、腕を捕まれた。
一瞬何が起きたかわからなかった。
気付けば
五条の胸の中にいた。
不思議な気持ち。
嫌なことも、辛いことも、
嬉しいことも、楽しいことも
五条の手も胸の中も
全部暖かい。全部涙で流れた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。