大学生活つっても学校が変わっただけで、やってることは何も変わらない。変えたいとも思わないけど。何だったら任務が増えた。
高専に出入りはしてるけど僕が過ごした4年前と比べても、明らかに呪術師になれる生徒の数が少なすぎる。全然、力のある奴がいない。つか、育ってない。あれじゃ、お先真っ暗だな。
あなたと別れてから、彼女らしい彼女もできてない。言い寄られて、いい思いしちゃっても結果的にちょっと、めんどくさいんだよね。
こんな断り方も何回目だろう。祥子に、いつか刺されろって言われちゃったけどさ。
しょーがなくね?本気になれないだけだから。
卒業まであと少し。
高専勤務の内定貰ったし。学長には元担任だった夜蛾が着任したから、気兼ねなく僕の夢に向けて変革させていただきますよ。
―あなたside―
帰国してから捜査支援研究所に就職した。
心理学を始めとする行動科学を踏まえた、犯罪の捜査を支援するための研究や実際の事件の捜査支援をしている。
私の能力が直接使えなくても、それが役に立ちそうな仕事に就きたかったんだ。
祥子に連絡取ろうと思ってたけど、新しい道を進む今だから、やめておいた。
もう学生ではなく、社会人としてなんて大袈裟だけど、初出勤の日に、ネックレスを外した。
1年が経ち、何となく仕事にも馴れようやく自分にも余裕ができた。
その頃、祥子からLINEが来た。
すぐに電話が掛かってきて、久しぶりに再会することになった。
祥子と5年ぶりに会い、色んな話をした。
高専のこと、就職のこと、恋愛のこと。
そして、五条のこと。
あんなに尖っていた話し方が、今となっては信じられない程角がとれているらしい。
上から煽るような発言は今だ健在のようだけどね。
色濃かった筈の高専の思いでも、色が薄くなり始めていた。
そうだなぁ、もしかしたら高専時代の野暮ったさは少し取れたのかも知れない。
年を重ねる度に、不要なものが削ぎ落とされていく。より自分らしく、そしてその「らしさ」が、強さに変わって行くのかもね。
―とある日曜日 カフェ―
私は久しぶりにゆっくりできる。
ちょっとオシャレに、近くのカフェへ。
天気もいいから、
カフェテラスで早いランチしよーっと。
カフェオレを飲みながら、好きな本を読む。
至福の時間。
―車の中―
信号待ち
あなたに似た子がテラスで本を読んでる。
雰囲気が微妙に違う気もするし、
髪型がボブだし・・・・・・・・・・
五条さん、どうかされましたか?
急に笑いだしたりして…
伊地知が言う。
はい、あなた確定。
いやいや、ホントかよ。
いやぁ~僕ってば、六眼でよかったぁ。
髪型のせいもあるのかな。
昔の印象と違う。いー感じじゃん。
別れてからどんくらい経つっけ?
4・5年くらいか。
あん時は10代だったもんな~
青かったな、僕らは。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。