第72話

6.
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2021/05/12 18:07
ほんの一瞬でも私のことを覚えているジミンに触れられたことが嬉しかった。
だけど、その彼はもう……ここにいない。


今まで我慢していたものが一気に溢れ出てきたのも束の間、今度はそれらを抑え込むことが何よりも苦しくてたまらない。
もっと、ジミンを感じていたかった。
もっともっとジミンと話がしたかった。
もっと______……、私だけのジミンでいてほしかった。


「じゃあね」とひと言置いた後、背を向けて遠ざかっていく彼を見つめながら、呼吸が出来なくなるほど煮えたぎるこの感情をどうにか鎮めようと必死に抗った。



you
you
……っジミン!
ジミン
ジミン
うん?
you
you
また……っ、私と会ってくれますか?




今のジミンにこんなことを言ったって、気持ち悪がられるだけかもしれない。
けれどどうしても、次の約束を結んでおかないと不安でたまらなくなる。


ここで会うのが最後になってしまうかもしれないって、このまま疎遠になってしまうんじゃないかって怖くなる。

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