あなた"ちゃん"。
その場にしゃがみ込んで、頭を押さえて痛みを堪えている様子のジミンは、苦しそうな表情を浮かべながら私を見て言った。
少し前までのジミンとはまるで別人。
そしてその目つき、その言葉遣い、その表情ですぐに理解した。
今はもう、私のことを覚えていない"彼"なのだと。
心の中で何も整理できていないまま、それでもジミンの言葉を遮った。
だってたった今、ジミンは確かに私のことを思い出していた。
ジン先生のことを知っていると言って、私を抱きしめて誰にも渡したくないって、そう言った。
本当に一瞬だったけれど、その一瞬が私の希望だった。
ジミンの中にはまだ、私との記憶がちゃんと存在しているんだという証明だった。
それを知って、離れられるわけがない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。