第69話

4.
406
2021/05/10 16:39
あなた"ちゃん"。
その場にしゃがみ込んで、頭を押さえて痛みを堪えている様子のジミンは、苦しそうな表情を浮かべながら私を見て言った。



you
you
嘘だ……





少し前までのジミンとはまるで別人。
そしてその目つき、その言葉遣い、その表情ですぐに理解した。
今はもう、私のことを覚えていない"彼"なのだと。



you
you
……病院、行きますか?
ジミン
ジミン
ううん、大丈夫
you
you
でも
ジミン
ジミン
あなたちゃん。
もう俺に近付かない方がいいのかもしれない
you
you
……え?
ジミン
ジミン
いきなり君を抱き締めるなんてどうかしてるよね。
これ以上俺があなたちゃんに何かする前に……
you
you
いや……っ!
ジミン
ジミン
……
you
you
いや、です




心の中で何も整理できていないまま、それでもジミンの言葉を遮った。
だってたった今、ジミンは確かに私のことを思い出していた。
ジン先生のことを知っていると言って、私を抱きしめて誰にも渡したくないって、そう言った。
本当に一瞬だったけれど、その一瞬が私の希望だった。
ジミンの中にはまだ、私との記憶がちゃんと存在しているんだという証明だった。


それを知って、離れられるわけがない。



you
you
離れたく、ない

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