ベッドから降りてゆっくりとこちらへ歩いてくるジミンは、私を横目に見ながらそう問う。
カチャッ、カチャッと1つずつ破片を拾っていく彼の背中を見て……悟った。
ジミンには私の記憶が____……ない。
その他大勢の赤の他人を見る目と同じ。
ジミンにとって今の私は、他人なんだ。
ジミンが横を通り過ぎたときに感じた、私との身長差も、匂いも、髪型も、なに1つ変わってはいないのに。
だけどそこには温かさがなかった。
ジミンとの“別れのとき”について考えたことがある。
とくに付き合い始めたばかりのあの頃は、ジミンと私が別れる原因はなんだろうと夜な夜な考える日も多くあった。
それはジミンには常に沢山の選択があったから。
彼が勤めている会社の名前だけで数倍モテると聞いたことがあるし、加えてあの容姿は世の中の女性の目を引いてしまうようなつくりになっている。
“私”と“私以外”という道があまりに多くて、いつ訪れるか分からない別れを勝手に覚悟していた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。